熱帯夜
ふ、と不快感に目が覚めた。霞んだままの視界で見るに、時刻は深夜十二時過ぎ。全身がじっとりと汗で湿っている。汗で濡れた首筋に、伸ばしっぱなしの髪が張り付いて余計に不快感が増した。
どうやらエアコンが切れたらしい。ベッドの下に転がる、電池の抜けたリモコンを発見して合点がいった。腕が当たった拍子に停止ボタンが作動したのだろう。
一瞬、このまま寝てしまおうと目をつむったけれど、蒸し風呂と化した部屋では不可能だった。
「……はぁ」
無意識に漏れた溜息。足を振るようにしてベッドから起き上がり、エアコンをつける。一先ず汗だくのシャツを着替えることにした。
さて、次は……と冷蔵庫を開けて、絶句する。心地よい冷気に包まれた箱の中には何も入っていなかったのだ。いや、チーズと卵なら入ってるけど。しかし、今の私が欲しいのは水なのである。欲を言えば炭酸水。いやこの際、欲は出さない。
「……水道水」
埼玉の水道水って飲めるのだろうか、なんて、水道局の人が聞いたら激怒しそうなことを思うけれど、残念ながら私は哺乳瓶からミネラルウォーターで育った現代っ子なのである。
再び時計を見上げる。時刻は深夜十二時過ぎ。……まぁ、コンビニはすぐそこだから大丈夫だろう。せめて上着は着ていこう、とよれたパーカーを着る。
こういう時、高校時代のジャージを残しておけばよかったと後悔する。あまりの色気の無さに変質者も裸足で逃げ出すだろうに。
スマホと小銭入れだけを持って、玄関を開ける。もわん、と身体を包み込んだ熱気に吐き気がした。
真夜中でまだこの暑さ……本当に、夏なんか嫌いだ。
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