鉄と氷の融解点

よもぎパン

愚かな女の最期




 アーニャが死んだ。寒い夜のことだった。

 

 アーニャは私と同じ孤児院に住まう、私と同じ年頃の少女だった。

 金色がかった栗毛と緑色の目を持つ、薔薇色の頬が美しい少女だったが、少しばかりおつむの方が残念だった。故に、彼女は命を落としたのだ。


 感情すら凍てつくほどの寒さ。雪の降る中、ろくな葬式も出してもらえず、くたびれたオモチャ箱のような棺に押し込められた少女に花を手向けながら、私は思う。夢なんか見ているからこういうことになるのだ、と。


 親に捨てられ、凍てつく世界で生きる私達が夢を見ること自体が間違いだ。

 明日の食いぶちを稼ぎ、生きることだけを考えていればこうはならなかったものを。


 痩せこけ、灰色になった少女の頬を見て思う。


 私は絶対に、夢なんて見ない。




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