Green.greeN

桜雪

恐怖のLanch break

第1話 備えの効かない災害もありますわ

「お嬢様…お別れにございます」

 白髪の執事の目に涙が溢れる。

「爺、心配しないで、たかが3年よ…高校は都内に進むから、心配しないで」

 少女が明るく笑う。

「お嬢様…」

 執事が少女の手を握る。

「大丈夫…次に会う時は、素敵なレディになっているわ」


 田舎に似つかわしくない黒塗りの高級車は、少女とキャリーバックを置いて行ってしまった。

(さぁ、来週から中学生…3年間、ここで生活するのよ)

 初めての1人暮らし、両親の反対を押し切って、自ら選んだ中学校、その条件として…

(この修道院で暮らすのね…)

聖・御霊修道院セント・ミタマ修道院

(カトリック感のないネーミングね…)


 門を開けると、手入れされた庭、噴水と池。

(まぁ…小奇麗にはしているのね)


「ぎゃぁ!!」

 教会の角から悲鳴をあげながら走ってくる若い男。

「待て、このガキャー!!」

 そして逃げる男を追いかけてくるシスター、異常に足が速い。

「許してください、出来心なんです」

 あっという間に捕まって、馬乗りになったシスターにボコボコに殴られている。

(なんですの?)

 少女の顔が引きつる。

「オラッ、返せこの野郎!!」

「ずびばぜん…」すでに鼻血で鼻が詰まっている

 男がポケットから黒い布を差し出す。

「シスターの生脱ぎパンティに手ェだすとは、いい度胸だ…此処は天国に近い場所…送ってやるよ…アーメン!!」

(パンティ?)


「我らが愛する主よ…中略!!…覚えてないアーメン!!」

 シスターがニヤッと笑う。

「おやめなさい…」

「あん?」

 教会から妙齢のシスターが出てきた。

(若い頃は美人だったんだろうな…)

「シスターベティ…彼から降りなさい…はしたない」

 上品そうな笑みを浮かべた、昔は美人だったんだろうなと思われるシスターが馬乗りシスターを諌める。

「罪人には、相応の罰を与えるんだ…邪魔するな、マザーキティ」

(マザー…偉い人?)

「いいえ…シスターベティ、主もおっしゃっております、右の頬を叩かれたなら左もと…」

「はい? じゃあ何か? パンティ盗られたらブラも差し出せと?」

「そうですわね…」

「生憎、風呂上りでね…ノーブラですわ」

「そうですか…致し方ありません…私の生脱ぎパンティを差し上げましょう」

 修道服を捲り上げてパンティに手をかけるマザーキティ。

「年増のはいらねぇ…」

 小声で呟く若い男。

 ピクッとマザーキティの眉間にシワが深く刻まれた。

「シスターベティ…その男を連れて来なさい…罪と罰の話を致さなければなりません…特に罰の方を重点的に…」

「あの~…御取込み中申し訳ありませんが、本日よりお世話になります…」

「ん? まぁ…あなたが有栖川 杏子ありすがわ あんこさんね」

「あん? アンコ?」


 有栖川 杏子(13) JCの運命を変える門が今、開いた。

 アーメン…。

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