8本目 アクセサリー
「このもふもふたちがわたくしの可能性とは、どういうことでして?」
「それはですねえ、みみこさんがこの子たちと絆を結んだ時点で、みみこさんの願いを具現化する力をこの子たちが得たということですう」
さきほど一瞬だけ間延びした口調をやめた気がしたベルさんであったが、結局すぐにもとの口調に戻ってしまった。あっけに取られるわたくしを前に、何事もなかったかのように怒涛の説明を繰り出すベルさん。
「最初に絆を結びやすいのは、その人が一番やりたいことを実現してくれる七色龍や、やりたいことを補助してくれる七色龍だと言われていますう。みみこさんは何かやりたいことはありますかあ?」
「そうですわね。個人的には銃撃戦がやりたいと考えておりますわ」
「銃撃戦ですかあ。それは難しいかも知れないですねえ」
「そんな気はしていましたわ」
ファンタジーで売っている作品で銃撃戦は難しい。それはそうである。いくらFPSオタクのわたくしでもそれくらいはわかっている。
「ほんの少しも期待をしていなかったと言ったら嘘になりますけど」
それはそれ、これはこれ、である。FPSオタクの
「七色龍がどんな力を授けてくれるかは、最初からわかることもあれば、わからないこともありますう」
「わかることがあるんですの?」
「似たような七色龍は似たような力を持つのでわかりますう。多いのは武器に魔法を付与してくれる七色龍ですとかあ、移動手段を提供してくれる七色龍ですねえ」
つまりわたくしの三もふは、そのどちらでも無い可能性が高いということだ。
「そういえば、さっき似たような子なら見たことあるとおっしゃってましたわよね。その七色龍さんはどんな方でして?」
「アクセサリーですう」
はい?
「もう一度お願いしますわ」
「アクセサリーですう」
「もう少し、ゆっくり言ってくださいまし」
「ア、ク、セ、サ、リ、イ、で、す、う!」
わたくしの三もふはアクセサリーの可能性があるらしい。
やはりどうやらとても個性的なゲームのようである。おほほほ。
「アクセサリーと一緒にどうやって戦えってんですのっ!!!!」
キレちまいましたわ……久しぶり(数日前の配信ぶり)にですの……。
「その方は七色龍とおしゃれをしたいという珍しい願いを持っている方だったので、みみこさんとは違うとは思うのですがあ」
「これまでの流れでは全然安心できませんわ! 三もふの能力を調べる方法はありませんの!?」
「戦闘に関するものなら、戦っているうちに自然とフォローしてくれるはずですねえ」
つまりはまたクロスボウの練習をすればいいということだ。わたくしの願い的に戦闘系以外の使い道はありえない。ありえない……ですわよね?
これで本当にアクセサリーだったら配信の視聴者的にはとても面白いかも知れない。現に配信管理ディスプレイを横目で見るとコメントがものすごい早さで流れている。
「今に見てなさい視聴者さま方……目にものをくれてやりますわ」
わたくしは気合を入れ直す。
思い出すのはオープニングの映像。過去の英雄は、たしかこう言っていた。
『望みを持て。友を信じろ。それだけでいい。それが一番大切な力になる』
友を信じろ、か。そうだった。わたくしは忘れていた。信じる心を。
信じよう。この頼りなくふわふわと浮いている三もふを。
「そうと決まれば行きますわよ! 三もふ! エイム練習を再開いたしますわ!」
訓練場へと足を踏み入れる。三もふたちはわたくしの後ろをふよふよと着いてきていた。言葉は通じるようである。一安心だ。
「おーい、みみこさあん。矢を忘れてますよお。新しい矢はこちらですう。ご自由にお使いくださいねえ」
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