第1299話 気配りの出来るイケ爺だったようだ。的なお話
聞きたいことがある程度聞けたが、そのタイミングで話が止まってしまった。
この後話をどう広げるか、一瞬考えてしまったが、それはユキノも同様なんだと思う。
そして、話が止まってしまうとどうしても意識してしまう。
今、ユキノと2人きりだという事を。
外の御者台にはロクショウさんも居るが、この馬車が高性能だからなのか外の音がほとんど聞こえないから、ここで普通に話すだけでは外には聞こえないだろう。
つまり、本当に2人きりと言える。
話が止まり、2人きりだと意識してしまうとどうしても思い出してしまう。
ユキノが、俺を好きだと言ったことが。
あの時は気が動転していたし考える余裕もあんまりなかったけど、今考えるとあれは牽制の意味があったんじゃないだろうか?
となれば、あれはただの嘘で実際はそんなでもないのでは?
うん、きっとそうだ。
そうに違いない。
「ユキノ……その、俺を好きだって話だけど、あれはあの場を凌ぐために言っただけで、本気じゃ、ないんだよな?」
「何を馬鹿な事を……本気に決まってるだろう。」
「うぐっ……。」
本気だった。
本気だというのなら、俺もちゃんと考える必要があるか。
これがただの知り合い程度ならば何も考える必要はないし、すぐに断るのだが、相手がユキノだからな。
今後の関係とかは正直どうでもいい……というよりも、受け入れるにしろ断るにしろなるようにしかならないから今考えたところでどうしようもないってだけなんだけど。
それよりも今は自分がどうしたいのか、どう思っているかが大事。
まずは断る場合。
そうした時、俺はどう思うだろう?
ああ、いや、違うな。
どう思うかを推測したところで所詮は推測で実際にそうなった時どうなるか分からない。
今は、ユキノの事だけを考えよう。
「な、なんだ?」
俺にとってのユキノ。
ヤマト出身の大名家の娘で、某ニンジャ漫画のコピー品というかパロディ品の影響でクノイチを目指したり勇者関連の物語が好きなミーハーなところがあるけど、基本的には真面目で頼りになる子。
鎖帷子を着てる。
「おい、なんとか言ったらどうなんだ? さっきからじっと見てなんなのだ!?」
あ、赤面してる。
かわいい。
かわいい?
そう、かわいいんだ。
色々と知ってる事はあるが、俺にとっては仲間で、頼りになる、かわいい女の子なんだ。
そういえば……婚約の話が来たとか言っていたな。
もしも本人の意思とは関係なく親が相手を既に決めていたらその場合はどうなるんだ?
やっぱり、その相手と婚約するのか?
なんか、嫌だな。
あー、そっかー。
嫌なのか。
それはつまりそういう事ね。
少なくとも、ユキノを他の男に渡したくないと思うくらいにはなってるって事か。
となると、後は嫁達の反応次第か。
ま、多分大丈夫だろうけど。
「ユキノ。」
「な、なんだ!?」
「いや、ちょっとこっちに座らないかなと思ってさ。」
そう言いながら座席の隣の部分をさすってみせると、その意図を察したようで無言で正面から横へと移動してきた。
その表情はどこか照れ臭そうで、でも嬉しそうでもある。
そんなユキノと肩を触れ合わせながら、会話もないがどこか落ち着くようなそうでないような10分を過ごして宿へと帰った。
あれ?
話をしたり考えたりしてたのに、そこから更に10分?
行きは10分で着いてたよな?
つまりそれって遠回りをして時間を作ったって事だよな?
どうやらロクショウさんは神出鬼没なだけでなく、気配りの出来るイケ爺だったようだ。
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