第1294話 頭痛くなってきた。的なお話

〜ユキノ視点〜


「ユキノ? えっと、どういう事? というかなんの話?」

「どういうものかは、キリカさんに聞けばいいさ。」

「お母様?」

「ああ、そうだ。キリカさんに言っておく事があります。」

「なんでしょう?」

「レントは正直に言ってモテます。それはもう本当に。10人以上の人から好かれるほどにモテます。彼は大層モテてますが、本人から誘う事はなく、そういう関係になっている者達は皆レントに受け入れられて今の関係になっています。」


タチが悪いのは自分から誘わないという事はつまり、側にいてもそういう事にならないという安心感があるという事。

普通はハーレムを形成している男と相対する場合まずはそういう事を警戒するだろう。

しかしレントの場合は女性を女性として認識する事はあっても、異性として認識する事はない。

いや、異性として見ないようにしているが正解だろうな。

美人だったり胸の大きい女性だったりした場合は相手を意識しているような様子がある。

しかしそれは男としての本能のようなものでそう見ないように努めている事もすぐに分かる。

だから安心できる。


その安心感は近くにいても自然体でいられるようになり、自然体でいられるという事は居心地がいいという事に繋がる。

気を張らずに済むのはそれだけで居心地の良さを生み出すからな。

レントもレントで容姿が優れていて女性に対して高圧的ではなくしっかりと人として尊重してくれる。

強さも甲斐性も申し分ない。

しかも抜けてる所がある為に完璧ではないのがまた憎い。

完璧ではないから一緒に居て息が詰まるという事がないし、むしろそういうアホな所がかわいいと感じてしまう。


そして懐に入れてしまえば他人に渡さないとばかりの強い独占欲も持っている。

強い独占欲というのは一種の麻薬のようなもの。

強い独占欲は強い愛情の証であり、それだけ愛されているという事は女として強い優越感を与えてくれる。

レントはこれらを全て無自覚に行なっている。

好かれようとしないが故に好かれるというのは、全く酷い話だ。

見事にハマった私が言えた事ではないがな。


「レントは常々こう言ってます。酷い言い方になるけど、既婚者である自分とそういう関係になりたいのなら自分を惚れさせるべきだ。もちろん、嫁達みんなに認められたらの話だけど、と。つまり、レントが例え好かれていようと、レントの嫁達に認められて尚且つレント本人が好きだと思わないと受け入れる事は決してありません。親が決めたような形だけのものは決して受け入れられないでしょう。」

「つまり、ユキノちゃんは私が無理矢理婚約させようとしてると、そしてそれは無意味だと言いたいのね。」

「さあ? どうでしょうね。ですが、レントは本人の望まぬ婚約話を受け入れる事はないでしょうね。そのレントは突然の展開に頭がついてきてないようですが。」


ここまで驚かれると、流石に悔しいな。


「あの、お母様? 結局のところ、一体なんの話ですか……? 婚約がどうのと言ってますけど、もしかして……。」

「そうですね、レントさんを貴方の伴侶にと思っていたのですが、こう言われてしまいましてね。斬葉、貴方はどうしたいですか?」

「私は……レントさんと一緒になれればきっと楽しいとは思います。ですが、私では舞台に上がる事自体出来ないでしょうね。私は斬葉なのですから。」

「そうね……。」

「そうだな。少なくとも、その名を捨てる覚悟が無ければ舞台には上がれないだろうな。」


キリハとはリュウガミネ次期当主のみが名乗れる名である。

故に、その伴侶にはそれ相応の者が望まれるだろう。

それが無くても、レントの特殊性を考えれば、それなりの覚悟が必要だろうな。


「とはいえ、周りがとやかく言うだけが婚約ではありませんし、レントさんの意見も聞きたいですね。どうですか、レントさん。斬葉と、娘と婚約をしてもらえませんか?」


結局はそこなのだ。

私がレントとはこうだろうと考えて発言していてもそれはレントの考えではない。

レントが仮にキリハを欲しいと思ったのなら、私はそれを止める事はできない。

私自身、まだそこまでの影響を与えられる立場ではないのだから。

というか、セフィア達ならば大歓迎だと迎えそうなんだよなぁ……。

リュウガミネの事、私のキサラギの事、帝様の事、それにアリシア様やレイカー様の事と考える事が多過ぎる。

はぁ……頭痛くなってきた。

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