第1289話 フラグなんて存在しなかったよ。的なお話
アクセサリーも含めて、無事にリュウガミネさん家に行くための服装が決まった。
この格好ならば問題はないだろうという事なので服装に関しては一安心だ。
「そういえばさ、やっぱりリュウガミネさん所には1人で行かないといけないのか?」
「む? どうしたんだ?」
「いやさ、こういうのって普通パーティ全員が招待されるんじゃないかなって。」
「そういう事もあるが……手紙にはなんと書いてある?」
「その辺の事は一切書いてないけど。」
「ならば基本は1人だけだろうな。呼んでもいい場合はその辺の事もしっかりと書いてあるはずだ。ご友人の方もぜひご一緒に……とかな。」
「そうなのかぁ……。」
1人だけってのはなんか緊張する。
「あ、そうだ。ユキノなら大丈夫じゃないか?」
「私か!? 何故そこで私なのだ!? そこは普通セフィアとかだろう!」
「え、だってユキノはキリハさんと友人だから向こうの人も許してくれそうじゃないか。それに、ヤマトの人が居てくれた方が俺としても礼儀とかその辺での失敗とかをカバーしてくれそうだし。」
1番の理由はこれ。
ヤマトの礼儀作法を知らないのが怖いというか、緊張する理由だからユキノがいてくれた方が安心するんだよ。
「それはそうなんだろうが……あー、分かった。引き受けよう。」
「本当か? 助かるよ!」
「ただ、そうなると服がなぁ……一度京の屋敷に行くしかないか。」
「それならみんなで行こうよ。ご家族の方々に挨拶もしたいし。」
「い、いや、それはいい! まだ会議もあるだろうし、いきなり行っても何も出来ない! とにかく今は行かなくていいぞ!」
「え、まあ、そう言うのなら……。」
「では、私は行くぞ!」
そう言うと逃げるようにユキノは出て行ってしまった。
なんだろう?
あの慌てようはきっと何かある。
とはいえ、いくらパーティメンバーといえと言いたくない事を無理に聞き出すのはどうかと思うし、帰ってきても何も聞かずにいよう。
気にはなるけど。
「そろそろ終わったー?」
「服決めはな。」
長々と服決めをしていた所為か焦れた蒼井がもう1つの部屋のメンバーを連れてやって来た。
着替えてたらどうするつもりだったんだ?
あれ?
そういえば俺、ユキノの前でも着替えていたような……忘れよう。
きっとユキノも見えないフリをしてくれていただろうし。
「ならそろそろギルド行こうよ。」
「ギルドねー。」
「何そのやる気のない返しは。」
「いや、そういうわけじゃないんだけど、今日は依頼を何か受けようかなと思っていたんだけどユキノが今京にあるキサラギ邸に行ってるんだよ。だから置いていくのもなーって思ってさ。それに俺依頼を受けられるか分からないし。」
「は? それどういう意味よ。」
「昨日ギルドの方で例の牛鬼の時に見つかったダンジョンの調査に関する話を聞いたんだけどさ、その調査の人員に選ばれなかった理由が英雄役を危ない目には合わせられないって理由だったんだよ。だから、依頼を受けようとして果たして受理されるかなって……。」
「いや、どんだけなのよ英雄役……。」
それは常々感じてる。
ホントすごいよね、佐野総一郎。
伝聞では伝わらないくらい絶望的な状況だったのかもしれないな。
「それなら街の外を見て回ればいいんじゃないかな? 別に依頼を受けてなければ行けないわけじゃないし。」
「前もそう言って牛鬼に会ったけどな。」
「流石にあんな事そうそう無いわよ。」
「それもそうだな。」
なんてフラグな事を言い合いながら笑いあう。
「それじゃあ、ユキノが帰ってきたら街の外に行くって事でいいか?」
「「「さんせーい!」」」
◇
ま、結局何も無かったんですけどね。
フラグなんて存在しなかったよ。
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