第1278話 集中していこう。的なお話
模擬戦を終えたらそそくさと場所を空ける。
他にもやりたい人がいるからだ。
レイダさんとか。
相手はユキノを指名していた。
「えーと、それであんたは一体何をしているのかな?」
「何って……リリンを抱えてる?」
「そうね。何でしてるのかっていうのを聞いたつもりだったんだけど?」
「あの技の危険性はお前も分かるんじゃないか?」
「分かるけど、それと何の関係があるのよ。」
「危険だからこそ、なんていうかこう……ちゃんとここにあることを確かめたいというか……今はとにかくこうしていたいんだ。」
「……そう。聞いた私が馬鹿だったわ。」
「呆れてんじゃねーか。」
「そりゃそんな返しが来たら呆れもするわよ。だってただの嫁バカなだけなんだもの。今は訓練をするべき時なのによ。」
呆れられてしまったが仕方ないだろ。
今は無性にこうしていたいんだから。
「んふふ。」
「どうした?」
「なんでもない。」
抱き抱えているリリンが俺の腕の中で頭をすりすりと擦り付けてくる。
なんだろうな?
よく分からないけど、すごく可愛い。
だから自然と抱きしめている腕に力が入ってしまう。
するとそれが嬉しいのかまた上機嫌な声を漏らしてリリンは頭をすりすり。
いや本当に、何この可愛い生物?
お持ち帰りしたい。
既に俺のものだけどさ。
でもそのくらい可愛いんだ。
「リリンだけずるいぞー。」
「ずるいぞー。」
どうやらリリンとのいちゃいちゃタイムは終わりのようだ。
「セフィア、審判はどうした?」
「終わったよ。」
「いや、まだやり合ってるように見えるんだけど……。」
「アカネちゃんに代わりを任せたから。」
アカネ……押し付けられたか。
後でアカネも抱きしめよう。
そうしよう。
セフィアが右後ろ側から、ルリエが左後ろ側からそれぞれ抱きついてきてベタベタと触れてくるので俺も2人を撫でたりしていく。
俺、やっぱりこういう感じのスキンシップが大好きだ。
心があったかくなる感じが凄くいい……。
ーードンッ!
「ねぇ、見ててイライラするからあんまりイチャイチャするのやめてもらえないかな? 次は手元が狂っちゃいそうだから。」
今の俺の心は冷えている。
頭頂部の髪の先端を掠るようにして飛んだ弾丸の存在を感じたから。
何しやがると怒るのは簡単だが、それはするべきじゃない。
実際、訓練の場でするべき事じゃないしそういう話がなくて飢えている……というのは言い過ぎでも出会いの1つや2つは求めているであろう蒼井の前でイチャイチャすれば煽っているようにも映るだろう。
これは完全に俺が悪い。
まあ、リリンが大事だからと存在を求めてしまったのは間違いじゃないけどな。
「悪かったよ。今後はちょっとだけ気をつけるよ。」
「ちょっとだけぇ?」
「そりゃあ、時々自分が抑えられなくなるから、気をつけると断言することはできないさ。でもまあ、気をつけるよ。それはそれとして、弁償はどうするんだ?」
「……あ。」
魔法銃ぶっ放したりすればそりゃあ、壁に傷も出来るわな。
とりあえず後で謝っておこうか。
それと修繕費はきちんと払ってもらおう。
「そんじゃま、次はセフィアが相手してくれ。」
「うん。いいよ。」
いつの間にかレイダさんとユキノの模擬戦が終わっていたのでセフィアに相手をお願いした。
次はさっきみたいにいかないように注意しないとな。
演舞の稽古じゃなくて、ちゃんと思考する相手だと意識していこう。
素早さに関してはリリンが勝るがセフィアは手数で勝っている。
油断していい相手じゃない。
手数の多さをいかに掻い潜るかが勝負の分かれ目になりそうだ。
集中していこう。
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