番外編 カインでのお話
「セラ、そっち行ったぞ!」
「任せて! ハァッ!」
リィナが追い立てて来たターゲットを気合いと共に剣を一閃して首を斬り飛ばす。
「ふぅ。」
「お疲れ。もう完全にブランクは取り戻せたんじゃないか?」
「どうかしらね。周りにお膳立てされた状況じゃあまり分からないわ。」
「それもそうか。」
とは言ったものの、最近はかなり動けているとは思うし、ブランクを取り戻せたか、あるいは取り戻しきる少し手前くらいにはなったとは思うかな。
ここまで来るのに結構時間がかかったが、もう少し。
あと少しでAランクとして申し分ないと言える段階になれるはずだ。
「ランクを戻してもらえるのに後どのくらいとか聞いてたりするか?」
「全然。だからいつになるか分からないのよね〜。でもまあ、それよりも先に、こっちの方をどうにかしないといけないわ。」
「それなりに良い物だとは思うが、それなりだからちと心許ないか。」
どうにかしないといけないのは武器と防具だ。
市販品の中でも良い物を選んだものの、やはり自分に合った物を選ぶ、あるいは作ってもらった方がいい。
前の装備は全部売っちゃったし買い戻そうにも既にこの街には残っていない。
「そういうわけだからもう少し稼ぐのに手伝ってもらうわよ。」
「了解。ま、俺達ももう少し稼いでおきたいと思ってたからちょうど良いしな。」
「俺達……? って、トリア……あなたまさか……?」
も、もしかして、子供が出来たの!?
それならお金が欲しいのも納得出来る。
だって子供にはお金がかかるってよく聞くんだもの!
「へ? 違う違う! そういうのじゃないから!」
「大体子供が出来てたらこんな所まで連れ回さねーよ。ま、目的自体は変わらないけどな。でも、それはまだ先の話だ。今はとりあえずその時の為に稼いでおきたいんだよ。」
「そう……そういう事ね。理解したわ。」
理解したけど、なんなのこの屈辱感……アベルの癖に一丁前に夫をしてるのがなんか腹立つ。
こっちは全然会えないというのに……。
あー、やっぱり迷宮都市に行こうかしら?
転属願いとか出したら受理されないかな?
今はヤマトに居るかもだけどすぐに戻ってくるだろうし、今のうちに転属して驚かせるのもありかもしれない。
ちょっと真面目に考えてみようかしら?
でもその前に、もう少し頑張ろう。
◇
「セラ。最近頑張っているようですね。その頑張りを評価して、明日からはAランク冒険者として扱わせてもらうです。」
「ありがとうございます!」
それはつまり完全にAランク冒険者として復帰したという事。
まだしばらくは受付業務と兼業するけど。
ふふっ、迷宮都市に戻ったレントさんの顔が今から楽しみだわ。
早く転属願いを書かないと。
けど装備が揃ってないしまだその時じゃないわ。
いえ、いっその事先に迷宮都市に行ってそこで装備を整えようかしら?
迷宮都市と言うほどなのだから装備類も充実しているだろうし。
「それに合わせて、セラには1つ依頼を受けて貰いたいと思っているのです。」
「依頼、ですか?」
「はいです。いつも通り『黄昏の獅子』の人達も居るので安心して良いですよ。」
「そうなんですか? それで、どこから依頼が?」
「受けてくれるです?」
「いえ、まずは話を聞いてからじゃないとなんとも……。」
「受けてくれるです?」
「あの……?」
「受けてくれるです?」
え、ちょっ、なんでそんなに頑なに教えてくれないんですか!?
というかこれヤバいやつですよね!?
一度聞いたら引き返せない系の奴ですよね!?
「えと、ことわ…「受けてくれるです?」…あの…「受けてくれるです?」」
あ、これ断れないやつだ。
ははは……私の幸せ計画が崩れていくよ……。
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