第1252話 慣らしてからの方が良くないか? 的なお話

順番が回ってくるのに10分ほど。

その間に挑戦した人は7人だけど、クリアした人は1人としていなかった。

見た感じそこまで難しそうには見えなかったんだけど、知恵の輪ってそういうもんだし油断は禁物。

簡単そうに見えても実際にやってみないことにはどうなるか分からないのが知恵の輪だ。


「兄ちゃんはどの難易度に挑戦する?」

「まずは初級から。」

「はいよ。じゃあいくぞ……始め!」


まずは形を観察する。

知恵の輪を構成しているのは2つの輪。

そこまで難しい形をしてはいない。

針金を曲げて作ったであろう物なので当然隙間がある。

定番はその隙間同士を使って通すのだろうけど……やっぱりそう簡単じゃないか。

となると……うーん。

あ、ここを半回転させて輪を内側に入れて、その後に引けば……良し!


「謎解き成功ー!」


店のおじさんが宣言した事で周囲がわっと沸き立つ。

いやいや、まだこれ初級!

そんな騒ぐほどのことじゃないから!


「景品はこの中から好きなのを選んでくれ。」


景品ねぇ。

所詮は初級だしと思ったが、なんかそこそこ良さげじゃない?

これ指輪?

久々のアイテム鑑定を使ってみれば……


ー柘榴石の指輪ー


柘榴石が使われている


うん。

見れば分かる。

というか、説明が説明になっていない。

名前の時点でガーネットが使われているのは丸わかりなのになんでわざわざ説明しているんだよ。

相変わらず精度が微妙過ぎる……。


まあ、宝石が使われているわけだしそこそこ価値は高いだろう。

石自体はそこまで大きくないし研磨も甘いからそこそこ止まりだろうけど。

それでも2000リムくらいはしそう。


「そいじゃ次はどうする? このまま中級に挑むかい?」

「いえ、続けて挑戦すると面倒なことになりそうなので遠慮します。」

「それもそうか……。一応決まりとして謎解き成功した者には次の難易度を続けて挑戦出来るってしてあるんだけど、この様子だと関係なさそうだな。」


やり方は分かったと言ってる声がちらほら聞こえるし、ここで続けてやろうものなら非難轟々だろう。

そんなわけで離脱して場所を譲るとすぐに別の客が挑戦を始める。

だけどまあ、店側も何の考えもなく同じ知恵の輪……訂正、謎解き細工を使うようなことはしないようで別の謎解き細工を取り出していた。


やり方が分かったと思っていたら別のが出てきてお客さんは困惑しているな。

同じ奴を使うわけないってちょっと考えれば分かるだろうに……。

とはいえ、俺がやるのを見ていたからか色々と動かしているみたい。

ヒントを与えてしまったみたいだが、別に俺がやらなくても他の誰かがクリアすればそれだけで攻略法のヒントが得られるだろうし罪悪感を感じる必要はないな。


そこから何人か挑戦者が入れ替わった所でリナさんがチャレンジ。

俺がクリアした時のやり方とこれまでの挑戦者達の失敗を観察していたようで、なんとかクリアするも残念ながら時間切れ。

後2秒早ければクリア出来ていただろうから、すごく惜しい。


たった2秒。

されど2秒ということでリナさんは残念ながら景品はもらえなかったが、謎解き成功したからか周りの客からは惜しみない拍手が贈られ、リナさんはそれを照れ臭そうにしながらこっちに戻ってきた。


「後ちょっとでした。」

「それでも十分凄いっすよ!」

「次やればきっと出来ます。」

「そうですよね! ようし、もう一度並んできます!」


そう言って列に並びに行ったが、リナさんの出番が来る前に真打ちが登場。

アデルの番だ。


「お嬢ちゃん難易度はどうする?」

「超級で。」

「は?」


いきなり超級かよ!

初級とは言わないまでも、せめて上級とかで慣らしてからの方が良くないか?

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