第1251話 初級くらいはクリアしてみせようじゃないか。的なお話
「それじゃ俺たちはこれで。楽しかったです。」
「おう。兄ちゃん達が遊んでくれたおかげで興味持ってくれたみたいだし、ありがとな。今度うちの店に来た時は負けてやるよ。」
「店?」
「ああ、イツキ家具店って言うんだよ。主に木工製品による家具なんかを扱ってるんだがな、今回は店の宣伝も兼ねて参加したってわけだ。」
「そうなんですか。それじゃあ行く機会があったらその時は期待しますね。」
「おう。」
集まってきたお客さん達の間を抜けて出店を離れ、次の店へ。
といってもここに行きたいっていう目的がないから次のというよりも別のといった感じだけど。
それにしても、家具店であんな大掛かりな仕掛けを作れるなんてな。
ヤマト恐るべし。
まあ、魔道具じゃなくて手動だったけど。
魔道具作りのノウハウなんて無いだろうし、宣伝目的の祭り期間中のみの物に魔道具を発注するのは勿体なかったんだろう。
そのせいで若い職人さんのような人が犠牲になったが、まあ、俺には関係ない。
せいぜい頑張れと心の中で応援するくらいだ。
遊戯系と土産系が並ぶ区画を適当に見て回る。
陶器に土産物、玩具に服に装飾品、果ては野菜まであって結構目移りしてしまう。
なんで野菜? と思って適当な店に聞いてみたところ、自分の畑で取れた野菜を売っているそうだ。
と言うか割とどこでもある光景らしいね。
俺は基本八百屋でしか買わなかったからあまり目がいかなかったのかもしれない。
そういえばバナナの叩き売りはよく見かけたな。
「ねぇ? あそこ妙に人が集まってない?」
「あ、本当ですね。」
「折角だし見にいってみましょうか。」
「そうっすね。」
アデルが見つけた人集りが何をしているのか見てみると、手元の小さな物をカチャカチャと弄っているみたい。
なんだろ?
あれだけ小さい上に常に弄ってるようでは何をしているのかまでは分からないな。
「そこまで! 時間切れだ!」
「あーくそ! あと少しだったのにー。」
「どこがだよ!」
「全然進んでないじゃないか。」
「うっせい!」
カチャカチャと弄っていた何かを机の上に放り出したのでそれを見てみた所、どうも知恵の輪みたいだ。
この国では知恵の輪が人気なの?
「さあ! 次は誰が挑戦する? 初級は1分、中級は2分、上級は5分。そしてその上の超級は10分の制限時間内に謎解き細工を解く事が出来れば豪華景品! さあさあ、誰がやる?」
「はい! やりたいっす!」
アイリスさん!?
いつの間に……。
「お、かわいい女の子だね。難易度はどうする?」
「初めてなんで初級でお願いするっす!」
「よし来た! 初級だな。ではこの砂時計の砂が落ち切る前に謎を解いてくれ。では……始め!」
いつの間にか参加していたアイリスさんはそのまま初級の知恵の輪……こっちでは謎解き細工か。
その謎解き細工に挑戦するが……やっぱり初めてやると言うだけあってよく分かってない様子。
特に進展する事なくそのまま終了となった。
「あー、悔しいっす!」
「こっちとしてはいつの間にかやってて驚いたんだけど。」
「なんか楽しそうだったんでやってみたっすけど、無理でした。」
「あれはコツとか経験が物を言うからなぁ。」
「へぇ。レントはやった事あるんだ。じゃあ、次空いたらやってみてよ。」
「えぇ!? 自信ないんだけどなぁ。」
アデルに無茶振りされた。
とはいえ、ちょっと触った事はあるしせめて初級くらいはクリアしてみせようじゃないか。
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