第1211話 食い意地張りすぎじゃないかな!? 的なお話
紅白巫女と話していると少しずつ人がやって来る。
開始時間も近いし当然と言えば当然だな。
アルフレッドに竜役のヒサギさんが連続して入ってきて、その後少し時間が空いて指導役の人達とキリハさんが入ってきた。
「ちょっ、えぇっ!? 何やってるんですか!? すみません! この人はこの国出身ではないので、平に、平にご容赦を!!」
「うおっ!?」
そして、猛烈な速度で近付いてきて頭を強引に下げさせられた。
ちょっと痛いんですけど。
まさかこんな所で土下座させられるとは思わなかったし、同世代の女の子が土下座する所を見ることになるとも思わなかった。
「くふっ。」
あ、今笑った!
こいつ絶対今笑ったよ!
「気にするでない。その者とは知己でな、すでに共に食事をする仲じゃ。だからそのように頭を下げなくても良いぞ。」
「え、食事ですか!?」
「何か問題でもあるか?」
「い、いえ、何も問題ありません!」
帝パワー凄い。
やっぱり偉い立場なんだな。
平にご容赦をなんて言葉リアルで聞く程なんだから。
でも、そう簡単に会う事は出来ずユキノやスズランさんも良く知らないって言っていた帝を一目見ただけで理解出来るなんて、キリハさんは一体何者……?
ひと騒動あった後、稽古開始の時間になったので指導役の人達が集合の号令をかける。
そんな指導役の人達の側には紅白巫女の姿もある。
「それでは、稽古を始める。だがその前に、帝様が激励にやって来てくださった。一言頂けるそうなので心して聞くように! では帝様。お願いします。」
「うむ。妾がこの国の帝、ヒミコじゃ。このヒノモトの近くにダンジョンが発生したり、牛鬼が現れたりと騒動が続くが様々な人の助けもあり今回も無事に封竜祭を行えそうで何よりじゃ。そして、その封竜祭における一番の目玉がそなたらの英雄演舞。そなたらの活躍こそが封竜祭を最高のものにすると心せよ。」
一応それっぽいことも言えるんだな。
伊達に1000年もの間帝をしているだけの事はある。
「帝様、ありがとうございました。では改めて、これより稽古に入る。皆準備は良いな?」
さて、ここからはまた稽古の日々だ。
途中で帝乱入とかあったけど、流石に稽古にまではでしゃばって来ないだろうし、一安心出来る。
というわけで早速ひと頑張りといきますか。
◇
集中していた事もありあっという間にお昼です。
いつもの場所に向かうとやはり紅白巫女が居る。
嘘だと言っていたのにな。
まあ、そんな気はしてたから別に驚きとかはないんですけど。
「稽古を頑張っているようじゃの。」
「そりゃ受かったからには中途半端な事はしませんよ。」
「そうか。」
「それよりも、朝の挨拶。真面目に出来るんなら普段からそうして下さいよ……。」
「ああ、あれか。あれは全部この紙に書いてあったからそれを暗記して言っただけじゃ。」
「カンペかよ!」
「嘘に決まっておろうが。ちゃんと自分で考えておるわ。」
「……はぁ〜。」
なんだろうな、この感じ。
今やっとクルトの気持ちが分かった気がする。
揶揄われてるってのが分かるのはなんだか釈然としないものなんだな。
まあ、だからといってクルト相手にボケるのをやめるって事は一切考えないけど。
今更変えられないし。
「まあ、こんなものはどうでもよかろう。それよりも、今日も持ってきておるのだろうな?」
「カツアゲかよ……。まあ、今日も作ってくれたけどさ。」
セフィアが持たせてくれた弁当を開ける。
その中身がこれまでよりも少しだけ豪華な見た目になっているのを見るに、昨日のやり取りで帝が食べるんだししっかりとしたのを作らないとって思ってしまったんだろう。
かわいそうに……この紅白巫女のせいで慣れない事させられて……。
「むぅ……これまで通りのが良いのだがなぁ……。」
「文句言わないでください。それに嫌なら食べなくても俺は一向に構いませんよ。」
「嫌だとは言うておらん! 無論食べるに決まっておろう!」
「って、ちょぉっ!? まずは自分の出してくださいよ!」
いきなりがっつき出す紅白巫女に負けじと俺も箸を伸ばしていく。
文句言ってても半分以上食べてるし、帝なんて言ってるくせに食い意地張りすぎじゃないかな!?
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