第1209話 俺、こういうの苦手なのに。的なお話

さて、それじゃあ何をしようかな?

みんなと合流して宿に帰ってきたけど、それで何をするかとか特に決めたわけじゃないからな。


「そういえばレント、あっちの方は大丈夫なの?」

「ん? あっちってどっちだ?」

「あっち。」


そう言って階下を指さすシア。

下……?

あっ!

やっば!

最近全然構ってない!


「怒ってるか泣いているか……どっちだろうね?」

「泣いてるとは思わないけど……怒ってるだろうなぁ。頭突きだけで済ませてくれると嬉しいんだけど……。」

「それはレント次第じゃない?」

「まあ、とりあえず行ってみるよ。」

「行ってらっしゃーい。」


ヤマトに来てから色々あったからすっかり忘れてたし、怒ってるよなぁ……?

ちゃんとスキンシップ取らないといけないな。


厩舎に向かいアルバとマロンの元へ。

すると予想はしていたがやはりかなりご立腹の様子で近づいたら速攻で頭突きをされた。

もちろん2頭ともだ。

痛い。


「ごめん、悪かったって。こっちはこっちで色々あったんだよ。」


うん。

本当に色々あった。

牛鬼とか毒とか試験各種とか紅白巫女の事とか……まあ、途中遊びに出たりもしたけど、それでも色々あったことは間違いじゃない。

でもそれはアルバとマロンには関係がなく、毎日とは言わないまでもちゃんと顔を見せに来たり様子を見に来たりしてれば良かったとは思う。

そりゃ怒ったとしてもしょうがないよな。

俺だってセフィア達に長い事無視され続けてたら怒るし悲しむ。

精神に異常をきたす可能性もあるし、構ってもらえないというのはそれだけ辛い事なんだから。


なのでアルバとマロンの機嫌取りっていうと下心があるように思えるけど、今日は残った時間は目一杯使ってアルバとマロンとのスキンシップに使った。

高い宿という事もありブラッシングだけじゃなく、身体を洗ってあげたりもしたんだが馬丁さんに怒られる事はなかった。

というかそれ用の道具とかも貸し出してあったし、それくらいは想定内なんだろう。



夕方までアルバ達に構い、夜は夜で嫁達に襲われてとあんまり休めた気がしないけど、不思議と身体に不調はない。


えーと、それで今日はなんだっけ?

……そうだ!

告知だ。

祭りのメインイベントである英雄演舞の主役が決まった事と、それに合わせて封竜祭がいつ始めるのかっていうのをヤマトの国民に告知するんだった。

午前中は簡単な打ち合わせで午後から告知。

告知の場所は英雄演舞を行う舞台でやるらしい。

その舞台が何処なのかよく分かってないけど。


打ち合わせをする為に役所に向かう。

告知にはどうやら英雄役候補勧誘員も紹介するらしく今回はユキノ同伴です。

なんかユキノと一緒にっていうのも久しぶりな気がするな。

三次試験中は一緒に来る事もなかったし。


役所に到着し、打ち合わせを行う会議室に入ってから気付く。

そうだよな。

アルフレッドも補欠とはいえ英雄役なんだからそりゃいるよな。

そしてアルフレッドもいるという事はつまり、そのアルフレッドを選んだ英雄役候補勧誘員であるアザミもいるという事。

ユキノは鈍感だし、アザミは拗らせてるしでどうなるのか、気が気じゃない……。

ユキノに気づいたアザミが声をかけて来ようとしたが、いいタイミングでキリハさん、ヒサギさん、告知をする役所の人が一緒に入ってきてくれて事なきを得る。

ハラハラするなぁ、もう。


「それでは、早速打ち合わせを始めさせていただきます。と言っても、告知の内容自体はそう多い物ではなく、いつ封竜祭を開催するのか、誰が英雄演舞に出るのかという事を国民に伝え、英雄演舞参加者の皆さんの軽い自己紹介等をしてもらう予定です。なので打ち合わせの主な目的は皆さんがどう動き、どのように退場するか、そしていざという時の対処法の話となります。」


あー、なるほどな。

卒業式とかだってどう動くかは最初から決まってるし、そういう感じで決まった動きの通りに行動すればいいってことね。

後いざという時っても、無いとは思うけど英雄役に選ばれなかった人とか、無差別犯とかそういう人が乱入してきたり、急に雨が降ったりとかそういう時のマニュアルの話だろう。

その予想は当たり、打ち合わせは簡単に終わった。

自己紹介の内容を考えるという宿題はもらったけど。

俺、こういうの苦手なのに。

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