第1159話 とりあえずこのイメージは没だな。的なお話
「今日の稽古を始めるが、その前に言っておく事がある。あそこで見学している彼女についてだ。彼女が稽古に参加するのは最終日だけだが、その前に様子を見ておきたいとの事なので今日明日の2日間見学する事になった。彼女が可愛いからっていい格好しようとするなよ?」
ここは笑うところなのだろうか?
まあ、面白いとは思ってないので笑わなくていいか。
何人か反応しているが、ひょっとして既に何かやらかした奴でもいるのか?
……なんかこっち見てるな。
俺、いい格好しようとしてたって思われてる!?
そんなんじゃないから!
普通に集中してただけだから!
俺の集中力なめんなよ?
鍛治に集中するあまりお昼を食べ忘れるくらいには凄いからな!
「では、稽古を始める。まずは昨日までのおさらいからだ。」
昨日と同様におさらいをするようだ。
とはいえ、昨日もおさらいでたくさん修正されて、練習を繰り返したということもあって、一昨日の内容に関してはなんの問題はなく、昨日の内容も幾つか大変な動作があるものの、基本的には簡単な動作が多いこともあって昨日ほど長くおさらいをする必要がなかった。
今朝集中して練習した甲斐があって弧を描く横回転しながらの跳躍も最後の吹き飛ばされる動作も少し指摘されただけですぐに終わった。
「大丈夫そうだから私は別の者を見にいくとしよう。次の稽古まで好きにしてていいぞ。」
他の人達は少しばかり苦戦しているみたいでまだ時間がある。
この時間も練習しておこう。
反復練習は大事だからな。
少し時間が経ち、他の人達のおさらいも済んだようで新しい事を教わる事に。
まず最初に指導役の人が実際に行う動作を一通り見せてくれる。
2日目と同じだな。
指導役の人はまず立ち上がり、剣を構える。
竜役の人が猛攻を仕掛けてきたのか防戦一方みたいな動きだが、後退する事はなかった。
多分、本来ならば後ろにキリハさん……巫女役の人が後ろにいるんだろう。
いつ合流したのかは分からないが、後半は巫女役が合流するって言っていたし。
防御一辺倒から一転。
突然攻勢に出る。
その動きはこれまで以上に機敏で、足を使って舞台を縦横無尽に動き回る。
なんだろう?
もしかして巫女役に支援系の魔法かスキルでも使ってもらったのだろうか?
それが終わるまで防御して耐えていのかもしれない。
縦横無尽に動き、時折鍔迫り合いや剣の打ち合いのような動きをし、かと思えば一気に後退して様子を窺ったりしてる。
きっと、巫女役の人が魔法か何かを使っているんだろう。
それを数回繰り返した後、指導役の人は剣を構えたままピタリと動きを止める。
そこはかとなく緊迫感が伝わってくるような気がする。
十数秒のはずなのにまるで数分間睨み合っているようなそんな錯覚までしてくる。
……動いた!
駆け出し、上段からの渾身の一撃を振るい、そのままの姿勢でしばらく静止する。
あ、これ定番の奴だ。
その予想通りと答えるかのようにぐらりと体をよろめかせるが、済んでのところで踏ん張る。
そして、後ろを振り返り、何かを確認するかのような仕草をした後虚空を見て頷く。
これで終わりらしい。
指導役の人はこちらを見ると、まずは最初の動きからだと言葉を発する。
最初のは確か……防御をしていたな。
後ろに通さないような感じで後退することはなかった奴だ。
指導役の人の動きを良く観察して動きを真似ていく。
しかし、ただ防御の動きをするだけだといまいちピンとこない。
そういう時はイメージを明確に持つといいだろう。
イメージはキリハさん……だとなんかしっくりこないな。
やっぱ会ってからあんまり時間が経ってないからだろう。
ここはやはりセフィアかリリン、ルリエ辺りか……セフィアにしよう。
魔法の詠唱をしているセフィアの護衛をしているイメージで。
うん。
しっくりくる。
「あー、真面目なのは分かるが、緊迫感出しすぎだ。それでは演舞ではなく本気にしか見えないぞ。」
しっくり来すぎていたらしい。
そうは言っても、セフィアをイメージしたのだからしょうがないじゃないか。
……とりあえずこのイメージは没だな。
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