第1134話 一体何を考えてそれを混ぜたんだ…? 的なお話
図書館に戻り再び英雄演舞に関する本を読んでいく。
さっき本を戻したばかりだから場所は完璧に覚えているはずなんだけど……何冊か見当たらない。
もしかして、お昼を食べている間に誰かに読まれてるのか?
そこまで人気なのか……。
そりゃ祭りにもなるわ。
何冊か無かったけど、残りの本を持って適当な席に着く。
これは……詩集?
いや、吟遊詩人の歌を集めた本か。
内容は主人公である英雄がカッコ良く活躍する様を謳っている反面、それ以外の内容が少ないな。
客の意識を集めないといけないから盛り上がりやすい部分をメインにする必要があるからそれも仕方ないか。
この本から分かるのは、英雄の名前がリュウトだということ、そしてリュウトが使っていた武器が片刃の剣だということか。
次の本は……歴史書か。
どうやら今から600年ほど前の出来事だったようだな。
アデルが生まれるよりも大分前なのか。
それだけ昔の祭が今も続くのは凄いな。
この世界には長命な種族も存在しているから伝承とか伝統が途絶える事が起きにくいのかもしれない。
流石に文明が滅ぶような事があればその限りではないだろうが……。
封じられた竜は絵本にもあった通り黄金色の鱗を持つ竜で……えっ!?
ヒノモトに現れたの!?
うわ〜そりゃ大変だっただろうな。
もしかしたらどこかにその時の戦いの痕跡とかが残っていたりするかもしれない。
過去を忘れない為にとかそういう感じで。
それよりも、他の面子に関する内容が少ないのが気になるな。
特に巫女。
分かるのはヒミコという名前だと言うことだけだ。
巫女でヒミコなんて出来過ぎだとは思うけど、ヤマトは日本に似ている所が多々あるしヒミコという名前の人が居たとしても不思議ではない。
きっと出来過ぎた偶然なんだろう。
3冊目は……英雄伝説を基にしたフィクションのようだ。
こりゃ大した事は分からなそうだしスルーして良さそうだな。
4冊目は辞典のような物。
どうやら過去の偉人や英雄なんかのひとかどの人物を集めた資料本で、そこに英雄に関しての記述もある。
それによれば英雄は黒髪黒目で身長は175cm程度。
年は当時20に満たない容姿だった模様。
ただ、この世界には寿命が伸びるスキルか方法があるらしいから必ずしも見た目通りの年齢であるとは限らない。
使用武器は片刃の剣だけど、長さは1m程ある大剣だったみたいだ。
竜と戦うのだから長い方がいいしそれも当然か。
竜相手にナイフで挑んでも大した傷は負わせられないだろうしな。
得意とする魔法は火魔法だが他の属性も大体は使えたらしい。
なんだそれ、チートかよ。
俺も一応3属性覚えてるけどまともに使えるのは火魔法だけだ。
水魔法はまだ攻撃力があるレベルにまで達してないし、木魔法に至ってはトレントを呼ぶだけという訳の分からないスペルとかあるし。
成り立ちからすれば分からなくもないけど、現状じゃ戦闘にはとてもじゃ無いけど使えない。
食べ物の好みとかも書いてあるけど、そっちはどうでもいいな。
英雄演舞に出てくるとは思えないし。
5冊目……と思ったけど、もう結構な時間になってるし切りもいいからこの辺にしておくか。
結局、黄金色の竜が一体どこから現れたのか、そして巫女に関する情報などと謎な部分も多い結果に終わってしまったな。
たった1日だし仕方ないといえば仕方ないが。
「そろそろ帰ろうか。」
「んー、もうちょっと。」
「どのくらいかかる?」
「後10ページ。」
「分かった。じゃあ、それ終わったら帰ろうか。」
「んー。」
蒼井がまだ少し掛かるようでもうちょっとだけ待つ事に。
その間にみんなは自分が読んでいた本を片付け、俺も読んでいた本を戻していく。
すると、お昼から戻ってきた時には無かった本が本棚には収まっていた。
あー、やっぱり誰かが読んでいたか。
もしかしたら、俺と同じ英雄役候補が読んでいたのかもしれないな。
「終わったー。」
「それじゃあ帰るぞ。」
「分かった。」
「所でなんてタイトルの本なんだ?」
「赤ずきんと光虫の墓。」
「光……まさかな。」
「赤ずきん、それは石や。飴ちゃんやない。って台詞があったよ。これってさ……。」
「言うな……。」
まさか赤ずきんとそれを混ぜるとは……。
過去の転移者転生者は一体何を考えてそれを混ぜたんだ……?
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