第1128話 これじゃあしょうがないよね。的なお話

京の案内をしてもらった翌日。

今日はちょっとギルドに行って依頼とか眺めてこようかなって思っていたところにコハルさんがこっちに近づいてきた。

え、何?

まさかこんな朝っぱらから?


「あの、ちょっといいですか?」

「な、何ですか……?」

「最近というか、ずっと私の事避けてませんか?」

「いや、そんな事は……。」


実際はあります。

あまり視界に入らないようにしてました。

いやだって、最初の時がああだったんだから、そりゃ警戒もしますよ。

どこの世界にほぼ初対面の状態で夜這いしてきた女と親しく出来る男がいるんだって話だよ。

居たとしたらそいつは頭おかしいと思う。


「何でなんですか?」

「いやだって、コハルさん最初の時に夜這いして来たじゃないですか! そんな人と親しく出来るわけないじゃないですか!」

「あ、あれは! ……あれはちょっと好奇心に負けただけというか……。」

「ヘー、夜這いしたんだー。へー。」


せ、セフィアさん?

なんか、ちょっと怖いですよ……?


「コハルさん……ちょっとあっちで……お話、しようか?」

「えっと、その……えん……」

「お話、しようか?」

「…………はい。」


何やら凄みを出しているセフィアにコハルさんはドナドナされて行ってしまった。

そのセフィアを追いかけるようにリリンとルリエ。

そしていつもなら参加しないであろうシアとルナ、アカネとレイダさんもついて行ってしまった。


「南無……。」


とりあえずコハルさんの無事を祈りつつ、どうしようかと思ったけど、まあ、今日……少なくとも午前中はあのままだろうし、この間にギルドを眺めにでも行くか。

とはいえ、誰にも言わずに行くのも問題があるだろうし、書き置きでもしておこう。


書き置きをした後ギルドに赴く。

鵺の査定に関してはまだ何の連絡もないが、討伐される事自体少なく鵺が珍しいから時間がかかっているのだろう。


「所で、何でユキノがいるの?」

「英雄役候補を1人にしておく筈がなかろう?」

「左様で……。」


まあ、別にいいんだけどね。


ギルドの中は喧騒に溢れ……ていないな。

時間が少し遅いから大体の冒険者は依頼を受けに行ってるからかな?

ならラッキー。

ヤマトの依頼の内容とかを眺めるのに大勢の冒険者がいたら邪魔になっちゃって眺めるのが申し訳なくなってるだろうから、こうして人が居ない方が助かるというもの。


さてさて、依頼は、と。

んー……なんか、買い付けに行くのでその護衛を、とか、◯◯を狩って来てくれっていう依頼が多いな。

しかも、大体の依頼が数日から十数日掛かってる。

ここに残ってるのは依頼を受ける人が居なかったか、人数が足らない依頼だからそこまで人気があるわけじゃないだろうけど……こんなにも偏るものなのだろうか?


「なあ、なんでこんなに長期の依頼が多いんだ?」

「それはここがこの国の中心だからだ。当然この街周辺は軍が見回りや演習などで魔物の討伐を行っているのだ。そんな所で依頼を受けられると思うのか?」

「成る程。首都周辺が物騒というのは考えられないし、その原因の1つである魔物も当然狩られているから遠出する依頼が多くなるって事か。」

「そうだ。後は街中での日雇いの依頼なんかもあるが、そっちは新米冒険者とかが受けるのですぐに無くなるな。」

「成る程な〜。国の中心かどうかで依頼の傾向も変わってくるのか。となるとこの◯◯を狩って来てくれって依頼も商会の商品としてか大名の娯楽品として求められていたりするのかな。」

「さぁ、それはどうだろうな。私の実家は領地持ちだからな。京に住む大名の事については分からないな。」


ヤマトで街ごとの依頼の傾向の差なんていうちょっと面白い話も聞けたし、そろそろ帰ろうかな。

依頼を受けようにも、一応これでも英雄役候補ですから。

こんな長期で京を離れる依頼を受けるわけにはいかんとですよ。

ヤマトの依頼を受けてみたかったんだけど、これじゃあしょうがないよね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る