第1127話 なんか応援したくなってしまったよ。的なお話
気を取り直して、改めて店の中を見て回るとしますか。
店に入ってすぐのところにある忍ばない装備品達から目を逸らして店の奥へと進んでいく。
アデルも言っていたことだけど、やっぱり刀は無いんだな。
ただ単に金属を叩いて伸ばした後冷ますだけでは硬くはなるけど、刀自体が斬り裂くという事を目的としている関係で刃が薄い。
薄い刃で硬いとなると弾性が無くて簡単に折れてしまう。
その為使えないロマン武器扱いなんだけど……ヤマトなら置いてくれてもいいんだよ?
まあ、日本刀デザインの武器がないわけじゃないけど、アデルのあれは単純に強度が凄まじい金属で強引に斬り裂いてるだけだからなぁ。
それに、本来の製法で作った刀は手元にあるが……でもやっぱりこういう場所には置いていて欲しい。
しかし、刀が無いからと言ってここの店の品が悪いわけじゃ無い。
まだそこまで多くの金属を使った事が無いから確証があるわけじゃないが、この大剣……それに他の武器も。
いくつかの高値で売られている武器はかなり質が良いように感じられる。
それだけじゃなくて、素材も良さそう。
属性金属が使われているのか?
あるいは魔法金属の可能性もある。
やっぱり、使ってみたいなぁ……。
属性金属は勿論、魔法金属も。
前に教えてくれるみたいな事言ってたけど、あんまり時間が取れないのか全然教えてくれる気配もない。
なら他の鍛治師に教わればいいような気もするけど、日本刀の製法を前提とした技術を教わったから他の鍛治師に教わってその事が知られるのは良くない。
それに、ちゃんと教えてくれるとも限らないからなぁ。
やっぱりアリシアさんを待つしかないか。
武器に関しては不満があるわけじゃないので俺は買う事は無かった。
レイダさんはデザインがこれまでに見た事ないからと新しく槍を買ってたけど……。
店を後にして次は……と思ったけど、予想よりも時間が経っていた。
少し歩くと言っていたけど、それなりに距離が離れていたようだな。
更に言えばここは音の関係で宿のある地区とは結構離れている。
歩いて帰るとなると、そろそろ向かった方がいいかもしれない。
日が暮れる前には宿に帰りたいし。
夕食も街で食べるのならいいけど、折角のお高いお宿の夕食だからね。
街で適当な店で食べるよりも確実に良いに決まってる。
「あ、ユキノ! いつの間にヒノモトに!?」
「む? お前は確か……カザミだったな。」
「アザミよ、アザミ! アザミ・ホムラ! 本当にいい加減覚えてよ!!」
「そうだったか? すまないな。」
というかユキノよ。
風見は俺の名字だ。
「それで、一体何の用だ?」
「よ、用って、見かけたから声をかけただけじゃない! それとも何!? 用がなければ声をかけちゃいけないっての!?」
「そういうわけではないが。」
「そうやっていい気になっていられるのも今の内よ! 英雄役に選ばれるのは私が選んだクラウスに決まってるんだから! その男なんかけちょんけちょんのチョチョイのぷーなんだから!」
けちょんけちゃんのチョチョイのぷーって……。
なんだろう……。
どんどん性格面が幼児化していってないか?
「さて、移動の時間もあるし、帰るとするか。」
「え!?」
「なんだ? どうした? 他にどこか行きたいところでも出来たか?」
「いや、いいのか、あれ?」
「いいも何も、気にする事はないだろう。むしろ気にすべきなのは向こうの方だろう。こんな所で騒げばそれだけ評価に支障が出るだけだ。」
「それはそうだろうけど……。」
あのアザミって人見てると、仲良くしたいのについ意地を張ってしまうような、そんな感じがするんだよね。
あの性格じゃ難しいだろうけど、家同士がどうのっては簡単に口出せるものじゃないし、口を出すべきじゃないが、ユキノとは仲良くなれるといいな。
そう思わずにはいられないくらいには、なんか応援したくなってしまったよ。
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