第1085話 いや、なんとかしないと、かな。的なお話
鵺は翼も無いのに空を駆け、雷を纏うという話を聞いた事がある。
あるがそれだけで詳しい内容は知らない。
妖怪としての能力が空を飛んで雷を纏うだけって事はないだろう。
ってかそれって雷獣?
「ユキノ、鵺について知ってる事はないか?」
「黒煙を撒き、不気味な声を出して聞いたものを呪うという。そして雷を操り、炎を吐き、氷を降らせ、大地を割るという。」
「は!? なんだそれ!?」
「だが、その全ての能力を持っているとは考えにくい。恐らく、幻覚を見せる力もあるのだろう。」
「そういう事か。だが、これは厄介だな。」
どれが実際に出来てどれが出来ないか分からないから全部躱すしかない。
このまま護衛対象を近くに居させるのはまずいな。
となると……。
「リリン、ルリエ、シア、アカネ、蒼井はスズランさんを連れて離れてくれ。」
相手は単体で囲まれてない。
だから簡単に逃げる事はできるだろう。
なら5人も要らないだろうとちょっと思ったが、鵺が何故か追っていた3人組ではなくこっちを狙って膠着状態になっているからもしかしてを警戒した方がいいだろう。
さっきの3人組は実はテイマーでこの鵺も3人組に使役されていてこうして逃げるのを装って馬車を襲わせているかもしれない。
そして俺達のように戦力を分散させた所を狙うなんて事を考えているかもしれない。
考えすぎかもしれないが、警戒しておくに越した事はない。
護衛依頼を受けているのだから。
スズランさんがいなければ全員で相手をしたんだが、やはり護衛依頼は不便で大変だな。
「この状況で馬がまともに動けるわけないでしょ!」
スズランさんが何か言ってる。
そういえば魔物に襲われた際に馬が怯えて動けなくなるみたいなの物語とかでよく見るな。
だが、ウチの子達には関係ない。
「行けるよな、アルバ、マロン!」
「「ヒヒン!」」
「うそぉ……?」
「離れた所で待機、周囲の警戒に努めててくれ!」
簡単な指示を出すが見送る事はできない。
今もまだ膠着状態は続いているんだから。
睨み合いの時間が続き、ガラガラと馬車が進む音がしているが鵺は反応を示すこともなく、ジッとこちらを睨み唸り声を上げている。
そして何故か突然のそりのそりと近づい来たので殴った。
「なんだこいつ?」
「ギャン!」
さっきまでの睨み合いは一体なんだったんだ?
睨む?
あ、もしかして幻覚か?
幻覚を見せていて、それでのんびりと近づいて来たって事か?
でも俺には効いて無かったと。
「ガァァァァァァ!!」
キレたみたいで、鵺は叫ぶと周囲に黒い煙が発生する。
煙が周囲一帯に充満していく。
そして煙の量が増える度体が少しずつを重くなっていくのを感じる。
これが、こいつの放つ呪いという事か……だが、まだ大丈夫。
せいぜい運動して少しだるいくらいだ。
でも、それがいつまでも続くとは限らないし、動けなるなるほど辛くならないとも限らないので、急いで倒す必要がある。
「ふっ!」
接近して斬りかかるが鵺はひらりと宙に舞い躱す。
そういえば飛べたっけな。
バチバチと音を立て、紫電を全身に纏わせだす鵺。
さっきまでのはお遊びだったってわけか。
こっからが本番。
こんな事ならシアと蒼井も残しとくべきだったか。
何かあった時早期に対処出来るよう遠距離攻撃持ちがいた方がいいだろうと向こうにやったのはミスだった。
でもまあ、なんとかなるだろう。
いや、なんとかしないと、かな。
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