第1021話 こちらは焼かれる前に直ぐにしまいました。的なお話

平衡感覚が戻るのにそれほど時間は掛からなかったのだが、耳の調子が戻るのにかなりの時間が掛かっていた。

聞こえていないわけじゃないけど、似たような音とか発音がうまく伝わらなくて、その間の意思疎通が難しかった。

リリンとルリエ、そして気絶中のセフィアとはアイコンタクトでなんとなくの考えとかそういうのが読み取れる。

だから、リリンとルリエの2人を主軸として周囲の警戒を行った。

その行動を見てみんなも一応警戒をしてはいたけどね。

ちなみに、気絶していたアーマードッグは起きて暴れられても面倒なので、サクッと処しといた。

文字通り剣でサクッとね。


そんな感じで、セフィアが気絶から目覚め、耳も回復したのでリリン達気配察知持ちにどうしてトードスクリーマーの存在に気づかなかったのかの理由を聞く。

その際に注意すべきは怒っているような感じにならないようにすること。

別に責めたいわけじゃないからね。

気配察知持ち自体それほど多いものじゃないから気付かないのが普通なんだしな。


「なんで気付かなかったのか原因は分かってたりする? 例えば、アサシンスネークみたいに隠密能力が高いみたいなさ。」

「気配が弱い。」

「どういう事?」

「気配が弱すぎるのよ。どんな気配……それこそ虫みたいなのの気配まで探っていると疲れるし、それだけ感覚を鋭くすると人の気配で酔ったりするからそういう弱い気配は探らないように強弱を付けているの。だからモグラか何かだと思って気にも止めてなかったのよ。」

「なるほど、な……あのカエルの能力的に見て奇襲に特化しているだろうし、それで気配を小さなるよう進化した? あるいはそういう技能があったか……どちらにしても、厄介だけどもう大丈夫だろ?」

「ん。もう覚えた。」

「もう不覚は取らぬよ。」

「しかしこれ、普通の冒険者だとヤバくない?」

「だからこそのCランク魔物なんだろう。このサイズでこの脅威度だからな。とはいえ、一度でも経験があればなんらかの対策を講じるようになるし、初見殺し的な魔物なんだろうさ。2度目は無いさ、きっとな。」


1度目で死ぬ可能性もあるけど、ね。

とはいえ、これは言わない方がいいだろう。

こんな話、暗くなるだけだからな。



目的の1つであるトードスクリーマーを倒しその死体を回収した後は本命であるくまさんの捜索を開始する。

と言ってもまあ、この中流辺りで水を飲みにきたりするらしいから基本的にはこの辺を監視しつつ周りを見て回るだけなんだけど。

その際にリリン、蒼井、ユキノの気配察知組が時折地面に向かって短刀を投げたり、魔法銃を撃ったり、苦無を投げたりしていた。

そして短刀や苦無を拾ってみればその先端には絶命しぐったりとしているカエルが付いている。

結構いっぱい居るんだね……。

最初に遭遇したのが1匹だけでよかったよ……。


そうしてしばらく周囲を探していると遂に、遂に! 目的であるくまさんと遭遇した!

嬉しいね!

ハグしたいね!

でも危険だからそれはしないけどね!

でもそれくらい嬉しい!

というわけで早速!


「さようなら!」


スパッと首スポーンしてくまさんに別れを告げた。

捜索に費やした時間、1日と3時間。

戦闘に使った時間、6秒。

何これ。

今更だけど、使った時間に差があり過ぎる。

あり過ぎてもはや笑えてくるレベルだよ。

いやほんと、なんで今回はこんなに時間がかかったのやら。

だけど、これで無事に依頼達成です!

いや〜長かった。

いやいや待て待て待ちなさい。

まだ終わってない。

依頼はちゃんとギルドで依頼達成の処理がされてはじめて完遂されるんだから。

だからまだ終わってない。

油断しないようにさっき考えたばかりではないか。


「レント! あそこ!」


そう油断してはいないのだ。

リリンが指差した先には少し小さいカノンボルトイールがおり、雷撃砲の構えをしているが、俺はその射線から攻撃を察知し問題なく回避。

そして放たれた雷撃砲はドォーン! という音と共にくまさんの遺体をメラメラと燃え上がらせた。


ーーパチパチッ


火の粉が弾けるくまさん……1日以上費やして漸く見つけたくまさんが、がっつりと燃えている。


「おのれぇぇぇぇぇ!! 楽に死ねると思うなよぉぉぉぉ!!!」


うなぎは地面に縫い止め、生きたまま背開きにしてやった。


その後、そう時間を掛けずに2匹目のくまさんを見つけることができ、こちらは焼かれる前に直ぐにしまいました。

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