第1020話 完全に油断していたな。的なお話

クリムゾンベアの生息域をしっかりと調べ、ついでに新しく受けた依頼の対象であるトードスクリーマーという魔物についても調べる。

トードスクリーマーは無駄にでかい鳴き声による音波攻撃をしてくるらしい。

そして生息域だけど、ある程度クリムゾンベアと被っている。

それがこの依頼を受けた理由。

依頼内容はトードスクリーマーの納品……納品かぁ。

このカエルも肉が食えるのかな?


調べ終わり、資料を受付に返す。

その際に昨日狩った魔物の買取金を受け取る。

合計で約3400万。

……買取だけで十分じゃないかな?

ちなみに、シルバーエイプは毛皮と骨、ブラッディベアは肉、毛皮、骨、肝と捨てる所がほとんどないとかなんとか。

シルバーエイプは毛皮が好事家に人気だそうで敷物にされたりしてる。

後は素材としても使われるそうだ。

骨はその強靭さからこっちも素材として優秀だそうだ。

ブラッディベアは毛皮はシルバーエイプと同様に敷物と素材として、肉はそのまま食用、骨も素材、肝は錬金術に使われるとのこと。

いや、本当に依頼なくて良くね!?


とはいえ、それだと依頼している人が困るだろうからちゃんと依頼を受けるけどね。

そんなわけで三度森へ。

俺達が向かう場所はカノンボルトイールが生息している湖、そこから流れる川の中流辺り。

トードスクリーマーはその付近に生息している。

そしてくまさんだけど、川の中流で水を補給したりしているようで、定期的に姿を現すとの事。

俺達、普通に森の中を探していたからなぁ……。

それと、昨日探索していた場所にはまずクリムゾンベアは現れないらしい。

昨日の頑張りは一体……。

昨日のはあれだ。

お金稼ぎの為にブラッディベアとシルバーエイプを乱獲したんだ。

俺の心の平穏のためにもそういう事にしよう。


「そろそろだよ。」

「分かった。」


目的の川の中流が近いとセフィアが教えてくれる。

なのでここからは警戒度を少しだけ上げる。

しかし、少なくとも目に見える範囲にはトードスクリーマーは見当たらない。

カノンボルトイールの時にもここを通ったけど、その時も見かけなかったことを考えると、あくまでも中流付近に生息しているだけで必ずしも川の側に居るという事ではないのかもしれないな。


「みんな、気をつけて。」


そう思った瞬間、リリンから警告が。

もしや何か近づいてくるのか?

武器を構え警戒しているとアーマードッグが襲ってくる。

なんだ、ただのアーマードッグか。

これなら問題なく倒せるな。


ーーボコォッ!


「ゲロロロロロロロロロロロロロロッ!!!」


意識がアーマードッグに向いた一瞬だった。

突然の叫び声によって構えるどころではなくなり、武器を落として耳を塞ぐことしかできなかった。

耳を塞いでいてなお響いてくるカエルの鳴き声は次第に弱くなり、やがて収まった。

だけど、その効果は絶大で、襲って来たアーマードッグはその耳の良さから耐え切ることが出来ずに気絶している。

セフィアも同様。

狸人族なのが災いしたようだ。

それ以外のみんなは気絶するほどでは無かったが、三半規管が揺さぶられた所為でまともに立つことすらままならない状況。

更に先ほどの鳴き声のせいで耳鳴りがするし周りの声も聞き取りきることが出来ない。

しばらく待たないと聞こえるようにはならないだろう。


ふらつきながら剣を拾い周りを見渡すと土の中から30センチ程度のカエルが這い出てきていた。

あいつか……。

くそ、魔力も上手く練れない。

だが、サイズが小さい為、一撃入れさえすれば倒せるはずだ。

肥やしにしていた投擲用のダガーを取り出してカエル目掛けて放つ。

練習が足りていないけど、四本まとめて放ったお陰でその内の一本が刺さり倒すことができた。

なんとかなったか……今回はマジで危なかった。

完全に油断していたな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る