第1016話 後何回か依頼を受ければ的なお話

朝になったがまだ眠い。

昨日は早起きしたのに夜寝たのはいつもより少し遅いくらいで、なおかつ昨日は依頼を受けての戦闘を繰り広げたから披露もしていた。

そのせいでまだ寝足りないんだけど、あんまり遅くに行くというのもギルドには迷惑だろうし、起きるしかない。


「ふぁ……眠っ。」


宿で朝食をいただき、ギルドに向かう道中でカノンボルトイールについて少しだけ話す。


「カノンボルトイールが食用か分からないけど、ヤマトならウナギを扱っているんだよな?」

「ああ。」

「それで、カノンボルトイールはどれだけ確保した方がいいんだ?」

「全部で良くない?」

「良くない……。もしも食用にならなかったら全部不良在庫になるだろ。素材として優秀らしいし売ればそれなりに儲かるはずだろ。」

「うーん、でも1匹でも結構な量あるよね?」

「あるけど、もしも普通に食えたら、1匹だと少ないと感じるぞ、多分。」

「え、そんなに美味しいの!?」

「日本の食い方だとな。」

「うなぎのゼリー寄せって不味いって噂だしね。」

「ユキノ、ヤマトだとどういう調理方なんだ?」

「煮込みだぞ。」

「「「…………。」」」


え、ちょ、それまじ?

それってもしかしてアレじゃない?

アレじゃないよね?

アレは食べたくないよ俺!?


「捌いて開いた後、特製だれで煮込んだもので、甘辛くてとても美味いぞ。」

「「「よ、良かった……。」」」

「ん? 3人はどうしたんだ?」

「うなぎのゼリー寄せって、煮込み料理だから、煮込みと聞いた瞬間、それを想像してしまってな……。」

「ええ。」

「私も……。」

「後は蒲焼きもあるな。」

「「「それを先に言え!」」」

「えぇ!?」


しまった。

これはいくらなんでも理不尽過ぎた。

でもそれも仕方ないだろう。

順番が悪かった。

俺、あれだな。

いいニュースと悪いニュースがあるがどちらから聞きたいっていう奴、俺はまず最初にいいニュースを聞きたいタイプだ。

まずはそこで安心したいタイプのようだ。


「とはいえだ。蒲焼きがあると知った以上は量はそれなりに多く確保したい。とりあえず3匹でいいか?」

「……そうね。まずはそのくらいで良いわ。足りなければまた後で乱獲しましょう。」

「乱獲とは物騒だな!?」

「1人1匹か。それならまあ、いいかな。」


というわけでどれだけ手元に残すかの話も済んだし、丁度ギルドも目前になったことだし、さっさと買取金を受け取るとしますか。


「いや、全然済んでないからな!」


話は既に決まってます。

こればっかりは譲れない。

日本に繋がるものは譲れない、そんなお年頃なので。



「驚きましたよ! くまって気軽に言っていたのでてっきりCランクのクリムゾンベアか、あるいはDランクのブラックベアかと思ったらBランクのブラッディベアなんですから!」

「ブラッディベア? なんですか、それ?」

「なんですかって、あなた方が倒した魔物ですよ! 獲物を切り裂き、引き千切り、滴る血を舐める事を好む恐ろしい魔物なんですよ!」

「何それ怖い。」

「ですよね! それを倒したんですよ!」


うん。

ホラー的な意味で怖い。


「えっと、それは置いといてですね、カノンボルトイールに関してですけど、大和の方ではウナギは食べられているという話なので、とりあえず3匹ほど肉は貰っておこうという話になりました。」

「え、結局食べるんですか? というか食べられるんですか!?」

「それはまだ分かりませんけど、まあ、もしも食べられるのなら、食い出はありそうですし。」

「…………。プッ! なんですか、それ。」


笑われてしまった。

そんなに変な事言ったかな……いや、うん。

言ってるな。


「分かりました。では、昨日預からせて頂いた魔物からカノンボルトイール3匹分の肉を除いた買取金及び、依頼料の合計が…………1094万6000リムになります。」


3匹分の肉を取り除くという事で少し計算に時間がかかっていた。

なんかすみません、面倒かけて。


それにしても、約1100万か。

まあまあだな。

昨日は3000万のマグロとか見ちゃったから少なく感じてしまいそうだけど、1100万でも十分過ぎるお値段だ。

まあ、俺の懐に入るのは55万程だけど、それでも後何回か依頼を受ければ十分すぎるほど懐は潤いそうだな。

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