第1011話 斬り飛ばしての決着となった。的なお話

土壁が解除される。

雷撃砲は風壁によってかなり減衰されていた筈だろうに、それでも直撃したと思われる場所の土は黒く焦げていた。

それだけの威力があるという事だ。


こいつの本当の恐ろしさは、尾鰭による一撃でも、巨体を活かして全身のバネを使った突進でも、連射数の多い水魔法でもない。

最も恐ろしいのは、水魔法でフィールドを作ってからの雷撃砲。

これは早急にケリをつけた方が良さそうだ。


「ギィィィィィィ!」

「ギギィィィィィ!」


そう思っていたら、追加オーダー入りましたー。

湖からズルリと音がしそうな動きでカノンボルトイールが追加で2匹出てきた。

何故だ?

もしや、風壁で散らされた雷撃砲の一部が湖に当たり、怒らせてしまったのか?

それともこいつのご家族か何かか?

どちらにせよ、ピンチだという事だけは間違いない。


「セフィア、シアはそれぞれ新手の雷撃砲の防御を! アカネと蒼井は2人のサポート! リリンとレイダさんはアタッカー! 俺はこいつの相手をする! ルリエ、ルナ、ユキノは俺のサポートを頼む!」

「うん!」

「分かったわ!」

「任せて。」

「了解!」

「それから、無理に倒す必要はない。俺達がこいつを倒して援護に行くまで耐えてくれればそれでいい。」

「別に、あれを倒してしまっても構わんのだろう?」

「ああ、構わない。だけど、死ぬんじゃないぞ。あんな終わりは俺はごめんだからな。」

「もちろん!」


蒼井の奴がネタを振ってきたから答えるが、本当にどこで知ったのやら。

ネタ元、原作は一応エロゲだぞ。

俺はなんか人気だという事でなんとなく漫画を読んでハマったんだけど。


みんなにああ言ったので出し惜しみなしだ。

それに、こいつの能力からして時間をかければそれだけフィールドを形成されるという事。

数が増えてフィールド形成にかかる時間も短くなっているから本当に、手を抜いている……っていうと語弊があるけど、全力で挑まないといけない状況だ。


「断罪炎覇!」


今使っている剣が火属性の物だからなのか、それても大分慣れてきたからなのか、それは分からないけど、断罪炎覇を使うのが少し楽になった気がする。

発動までがスムーズになっている。

ひょっとしたらダンジョンでの経験が生きているのかもしれないな。


俺達が相対しているカノンボルトイールは俺が断罪炎覇を使ったのを見てからすぐに体から粘液を分泌すると、それを辺りに散布し始めた。

なんだ?

あの粘液は乾くとツルツルと滑るからそれを使って加速でもする気か?

そう思っていたが、粘液が乾く前に一気に加速してこっちに突進してきた。


「なっ!? くっ!」


突然の事だったので躱す余裕はなく、剣で受け止めるしかなかった。

粘液で滑ってきたのでかなりの重さだ。


「闇夜の誘い!」


俺が受け止めている間にユキノが何やら魔法を使った。

初めて聞く魔法名だけど、その魔法を喰らった瞬間カノンボルトイールの動きが鈍くなる。

その隙を見逃す事もなく、ルナが魔法で追撃。

ルナが放った魔法はシャドウオブデスピアーズ。

漆黒の杭による刺突ダメージと共に拘束効果のある魔法だ。

となれば……。


「螺旋炎陣!」


俺が一旦下がるとそれに合わせてルリエが炎の渦を放ち、カノンボルトイールを包み込む。

以前アデルに新技開発をするように言われた際に話し合った時の奴だな。

最初はただの炎の波だったけど、後の話し合いで試してみるって言っていたが、完成させていたのか。


だが、それで倒し切れるほど弱くはないらしい。

でもそんなのは大した問題じゃない。

今カノンボルトイールはユキノの魔法で動きが鈍り、ルリエとルナの魔法によって動きを封じられているのだから。


「こいつで、トドメだ!」


身動きの取れないカノンボルトイールの首を断罪炎覇で斬り飛ばしての決着となった。

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