第1010話 Bランクの魔物なだけあって中々に厄介だな。的なお話

痺れているカノンボルトイールは隙だらけなので攻撃を仕掛ける。

こいつは傷を負えば雷撃砲が無いと分かったからな。

傷をつけることを優先しよう。


「らぁっ!」


攻撃は問題なく通り、一つ、また一つと傷が増えていく。

よしよし、順調だな。


「っ!?」


と思っていたら、ギロリと睨まれた気がした。

その直後、カノンボルトイールの全身からドロリと粘液が滲み出てきた。

その粘液がどのようなものか分からないので一旦距離を取る。

粘液で滑って隙を晒すわけにはいかないからな。


しばらく様子を伺っていると、粘液がパキパキと固まっていく事に気づく。

そしてその粘液は怪我をしたところを完全に塞いでしまった。

もしかして、さっきの粘液は血小板のようなもので、怪我をした際に即座にかさぶたを作ることが出来るのか?

そして、このタイミングでそれをしたということはつまり……


「ギィィィィィィ!!」


とぐろを巻き、頭を上に持ち上げ出した。

間違いなく、雷撃砲だ。

だか、もしかしてと思っていたので即座に対応して接近する。

遠距離攻撃の簡単な対処法は相手に近づくこと。

こういうのは自分の近くというのは狙いにくいものだし、そもそも近くの相手を狙うための技じゃない。


上手く狙う事が出来なかったようで、無事にやり過ごす事が出来た。

かさぶたを作られるとはいえ、傷が付き粘液を出す瞬間は隙が出来るので出来るだけ攻撃頻度を上げていく。

足元には先程の粘液が固まったものがあり、それが意外と滑る。

ツルツルしてるから踏ん張るのに一苦労だ。


とぐろを解除するのに合わせて尾鰭を打ちつけて来る。

剣で受けつつ足元の粘液の塊を利用して衝撃を殺す。

粘液の塊から地面に変わった際にバランスを崩して転んでしまったのはご愛嬌という事で。

怪我はしてないし。


「ギギギィィィ!」


カノンボルトイールは自身の周囲にたくさんの水球を浮かせる。

その水球群から水の弾丸が次々と飛び出して来る。

普通に考えればすぐに水が尽きそうなものだが、撃つ度に補充しているのか水球のサイズは変わらない。

水の弾幕は数が多いので攻撃に転じる暇がない。


弾幕を躱していると足元に違和感を覚える。

これはもしかして……やばい?

いや、もしかしなくてもやばいだろ!?

魔法の水とはいえいくらなんでも純水などというは無いだろう。

なんらかの不純物は含まれているだろうし、地面に落ちた時点で不純物が含まれる。

純水は電気を通さないというが、純粋で無い水は電気を通す。

それに、こんなコンボ技を使って来る相手の水魔法が電気を通さないなんてあり得ないだろ。


「燃えろおおおおおおおお!!!」


呪文もイメージもへったくれもない。

ただひたすらに炎を作り地面を焼く。

多少水弾が当たるがそんな事気にしている暇はない。

急がないと全滅してしまう。


そして目の前の地面を焼き払った所で再びとぐろを巻き出すカノンボルトイール。


「セフィア! 土壁展開! シアは土壁の奥に風壁!」

「う、うん!」

「それよりも怪我を治さないと!」

「そんなのは後だ!」


2人が魔法を展開した直後、土壁の向こう側で閃光が走った。


「レント……怪我は?」

「ああ、打撲程度で済んでるよ。」

「それよりも、なんで治療を後回しにしたのよ。」

「蒼井とアカネは分かるんじゃないか?」

「まあね。」

「とっさに動けなくてごめん。それと助かったわ。」

「「「???」」」


生まれ育った環境の違いか。


「今は説明している暇はない。出来るだけ早くあいつを倒すぞ。」

「え、うん。分かった。」


Bランクの魔物なだけあって中々に厄介だな。

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