第1001話 どうやって魔法とか使っているというのだろうか…? 的なお話

「3270万とは随分と儲かるんですね。」

「あ? お前も女に出来るんだから簡単な職業だとか抜かす口か?」

「ええ!?」


何この豹変ぶり!?

女である事がそんなにコンプレックスなの!?


「そんなつもりありませんよ! 海自体がすごく恐ろしい場所で、荒れた時なんかは簡単に命を落とすし、穏やかな時でもかなり重労働で、それだけじゃなくて危険な海の生き物や魔物もいる。そんな場所で船という不安定な場所で戦うんだから、楽な仕事だとは思ってませんよ!」

「そうかそうか! お前よく分かってんな〜!」


やっぱり女である事を気にしていたようだ。

それはそれとして、距離感近くないですか?


「よし! これも何かの縁。私が売ってやる。自分用にもう1匹獲ってあるからそこから売ってやる。10キロだっけ? それなら30万でいいよ。」

「いいんですか!?」

「いい! 50万ってのも手数料やら店の利益やらが上乗せされてるからだし、私がそのまま売ればそんくらいで済むよ。」

「ありがとうございます!」

「さすがにここじゃ切り分けられないから私の家に来な。」

「なっ!? ローレムの家に、だと!?」

「「ん?」」


ローレムさんと話している間に競りは終わっていたようで、さっきこっちの方を見ていた人が突然驚きの声を出して、そのままこっちに近づいてきた。


「い、今のは本当なのか!?」

「別にあんたには関係ないでしょ? そもそも、これまで人を馬鹿にしてきたあんたに、私がする事にとやかくいう権利があると思ってるの〜? 何? また馬鹿にする気?」

「い、いや……そういうわけじゃないが……。」

「ならさっさと他所に行きなよ。じゃないと親父さんにどやされるよ?」

「くっ!」


悔しそうにしながら視線の人が去っていった。

本当に何なんだろうな?

ひょっとして、さっきの人はローレムさんが好きなのだろうか?

でもそれならあの怒りや憎しみが含まれた視線は一体……。

んー?

分からん。


「ごめんね〜。さっきの奴はネリクって言うんだけどさ、以前この港で1番の海狩人って言われていた人の倅なんだ。その人は今はもう引退して、海狩人をやっていた時の伝を使っての卸売りをやっているんだ。で、ネリクはその人の教えで海狩人としての教育をずっと受けていたんだけど、ぽっと出の私に抜かれたもんだからムカついてんだよ。それも女の私だから尚イラついてんだろうさ。器が小さいね〜。」


あの怒りや憎しみはそういう事か。

今まで積み上げてきたものが崩れてしまえばそりゃ怒りを感じるだろう。

憎くもあるだろう。

でも、あの視線にはそれ以外の感情もあった。

憧憬、つまりは憧れだ。

確かに嫉妬をしていたし憎くもあったが、それと同時に優れた海狩人であるローレムさんに憧れを抱いていたんだろう。

きっとな。


「さて、そんじゃ行くか。」

「あれ? 競りの代金は受け取らないんですか?」

「ああ、それは漁業ギルドの方に全部預けるようにしてるからそっちに振り込まれるよ。大体3270万は流石に多すぎるしね。」

「成る程。」

「ねーねー、それよりもずっと聞きたかったんだけどさ、そもそも海狩人って何なの?」

「それは私も知りたかったです。」

「実は俺も……。」


うん。

まあ、聞いた事ないからね、海狩人なんて単語は。


「ああ、他所から来たら知らないのも無理はないか。簡単に言うと海狩人っていうのは海を相手にしている冒険者って感じかな。」

「「「冒険者?」」」

「えーと、海にも魔物がいるのは知ってるよな? 海狩人は主にそいつらを相手にする漁師の事なんだ。黒金マグロも結構厄介な相手でさ〜、硬いし速いし、おまけに魔法まで使ってくるから大変なんだよね。」


え?

黒金マグロって、魔物なの?

ってか、どうやって魔法とか使ってるというのだろうか……?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る