第985話 終わらすとしますか。的なお話

しばらくすると本当に衛兵と思しき人を連れてきやがった。

しかもこいつらと顔馴染みなのかは分からないけど、その衛兵も犯罪歴持ちときた。

まともな奴はいないのかよ。


「衛兵さんよ、こいつがスラムのガキだ。」

「ほ〜、なるほどなるほど、確かにこいつは悪さをしそうな顔をしているな。それに、ここの代金を払えるとは到底思えない。お前達の言う通り、盗んだ金を使うか、食い逃げでも企んでいたんだろう。こいつはしょっ引く必要があるな。」


そう言うと衛兵かっこ笑さんは少女……いや、本人が男だと言い張っていたんだし今はまだ少年の方がいいか。

少年の腕を掴んで引っ張ろうとする。

そんな事、もちろんさせないけどな。


「ちょっと待てよ、衛兵かっこ笑さん。」

「か、かっこ笑って、お前馬鹿にしてんのか!? ……どうやらお前もしょっ引かれたいようだな。」

「どうぞご自由に……オーナマさん。」

「……何故俺の名前を知っている?」

「別にどうでもいいですよね、そんなの。それよりも、俺とこの子だけじゃなくて、そこのエカンガさん、ルノーさん、メンドさんも連れて行くべきですよね? 当事者なんですし。」

「いや、そこまでする必要はないだろう。彼等は犯罪を未然に防いでくれた善良な市民なのだから。」

「普通は状況を確認するために事情を聞くくらいはするよね? それに、彼等が善良? はっ! ふざけるのも大概にしてくださいよ。」


ちょっと今気が大きくなってる気がする。

でもこのまま突っ走る。

多分それだけ頭に来てるんだろうし、今回はその勢いのまま行った方がいいだろう。

俺は奥ゆかしい事で有名な日本人だからな。

後になるとその特徴が出てうまく言えなくなる可能性がある。


「そこの三馬鹿は3人とも犯罪歴があるんですよ。それなのに善良だと? ちゃんちゃらおかしいね。」


今時ちゃんちゃらおかしいなんて言う人居るのだろうか……。

なんかの漫画か何かの影響を受けているかもしれないが、今更言葉を取り消すのは恥ずかしい。

このまま行こう。

それに俺はそういう意図で使っているが、こっちの言語ではちゃんちゃらおかしいという古い言葉とは思っていないだろう。


「そもそもなんで1人だけで来てるんですか? 普通1人だけってのはありえないですよね? というかそもそも犯罪者が衛兵っておかしくないですか、オーナマさん。恐喝、詐欺それに暴行ですか。なんで貴方みたいな人が今も衛兵をやってるんですかね?」

「な、ななな、何を馬鹿なことを……それに、人のステータスを覗き見るのはマナー違反だぞ!」

「犯罪者がマナーを説いてるんじゃねーよ!」


周りの人達は衛兵かっこ笑の反応を見て、俺の言うことが正しいと思ったようだ。

そうなってくると面白いもので、さっきまではこの子の事を汚らしい物を見る目をしていた人達までこの衛兵かっこ笑と三馬鹿に対して嫌悪感を示すのだから。

そして無関心だった人達も興味を示すようになる。

ここまで来るとこの4人の未来は決まったも同然だ。


「さてと、それじゃそろそろ詰所の方に向かいますか。俺とこの子はしょっ引かれないといけないみたいですしね。」


そろそろこの茶番を終わらすとしますか。

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