第975話 そんな事よりも早く野営の準備をしなきゃ。的なお話

「みんなはどう思う?」

「そうねぇ……運び屋って言っても普通は馬車を使うと思うしどうもね……それに護衛がいないのも気になるわね。」

「そうだね。仮にアイテムボックスのスキルを持っていたとしても普通は護衛を用意するものだよね。」

「でも、自分達も戦うって、言ってたし、護衛が、いらないんじゃない?」

「うーん、でも私達を頼る訳だしそこまでは強くないんじゃないかな? なのに護衛を雇わないのはどうかと思うんだけど?」

「馬の維持にお金がかかるからじゃない? 自分達の分の他に馬の分の水と食料が必要だからそこまで費用を出せないとか?」

「そもそも本当に行商人なのかも怪しいわよね。」

「それもあるよね。」


ふぅむ……みんなの意見的には怪しいって事なのかな。

俺もなんか怪しいって思うしここは断るべきなのかな。


「あー、盛り上がっているところ悪いのだが、あの者達ならば多分問題ないと思うぞ?」

「「「へ?」」」

「以前言ったであろう? 護衛をしたりして路銀を稼いでいたと。」

「ああ、なるほど。その時に彼らの依頼を受けたと。」

「いや、違うぞ。」

「違うの?」

「彼らは元々冒険者だったのだが、安定した収入を得る為に今の職に変えたそうでな。私も1度護衛として雇ってもらえないかと頼んでみたのだが、その時に自分達は元冒険者だから必要ないと言われてな。それに移動速度も重要で護衛を雇って足並みが乱れ遅れる事になると言われてしまってはそれ以上何も言えなくてな……他の商人を探すのにそれなりに時間がかかってしまったよ。」

「なるほど……なら大丈夫か。」


ユキノが大丈夫って言ってるんだし大丈夫だね。

ここで嘘を言う理由もないし、何より信用してるからな。


「ちなみに冒険者をやっていた頃はDランクでつまずいたそうだから戦力としては微妙だそうだ。」


その情報は必要だけどいらなかったなぁ……。

そりゃ安定した収入も求めたくなるよね。


「話し合いは済んだか?」

「いえ、まだちょっと。」

「まだなのかよ!?」


うん。

この人達に対する疑いは晴れたけど、それとこれとは話は別です。

一緒に野営するかというのはすなわちこの人達のアレの心配と言うことでもある。

ウチの子達の内、7/9がお呪い持ちだから手を出そうとした瞬間アレが爆ぜるからね。

そうなると非常に面倒なので、その辺も考えて一緒に野営するかを考えなければならない。


「みんなはアレらと一緒に野営してもいい?」

「人数が増えればその分安全性も高くなるからいいんじゃないかな?」

「いや、アレが危険かもしれないって話だけど。」

「流石にそれはないだろう……気にし過ぎだ。」

「嫁達を守るのに、石橋を砕き割って鉄橋を新たに架けた後転移魔法で渡るくらいやっても足りないくらいだぞ?」

「何言ってるのか分からないがレントが過保護なのはよ〜〜〜〜く、伝わった。というわけでレントの意見は無視して皆はどう思う?」

「ま、別にいいんじゃない?」

「警戒しすぎるのも大変だしね。」


結局俺の意見なんてガン無視されて一緒に野営をするということになった。

ただ、それでもやはり不安はあるので妥協点として隣り合うみたいな感じじゃなくて距離はそれなりに離して野営を行い、何かあった際には協力をして対処する。

そしてパーティメンバーに手を出そうものなら力技で八つ裂きにするという条件を提案し、それを承諾してもらった。


ちゃんと誠心誠意伝えたのが良かったのだろう。

すぐに理解してくれたし、疑い過ぎだったかも。


「石を素手でちぎるのを見せられたらそりゃ頷かざるを得ないわよ……。」


後ろで蒼井が何か言ってる気がするが気のせいだろう。

そんな事よりも早く野営の準備をしなきゃ。

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