第969話 寝不足だなこりゃ…。的なお話
お槌け……じゃない、落ち着け、俺。
ここは冷静に……そりゃこれまで幾度となくフラグを立てておきながらそのことごとくを天に見放されスルーされ続けてきたし、興奮してしまうのは仕方ないだろうが、このタイミングで冷静さを欠くのは良くない。
油断、慢心は戦闘でもっともしてはいけないこと。
ステイクールに行こうぜってあのキャラも言ってるし、冷静に。
ふぅ……。
まずはこれからどうするかだ。
リリンが誰をこっちに寄越すか……。
少し待ち、テントから出てきたのは蒼井だった。
この状況下で気配察知があるのは必須条件で、アイテムボックスがあるから手ぶらに見えて便利な遠距離攻撃手段があり、そして俺と幼馴染みで意思疎通のしやすさを優先して蒼井にしたってところか。
ユキノだと連携と遠距離攻撃の便利さで蒼井より少し劣るからかな。
蒼井に声をかけるがひょっとしたら盗賊の耳が良くて聞こえているかもしれない。
1人少し近い位置にいる事だしな。
だから不用意なことは言わないようにしないといけない。
こういう時に備えてハンドサインとかを決めておくべきなんだろうけど、生憎とそういうのは決めていない。
咄嗟に思い出せる自信がないから……。
「みんなを起こしてはいないよな?」
そう、声を掛けつつ親指と人差し指を伸ばして手首を回す。
反対の意味のハンドシグナルだよ。
決して、なんでお前なんだよ、他の人と変わってくれって意味じゃないからな。
頼む、分かってくれ。
「当たり前でしょ。」
そう、返してきながら軽く頷いた。
良し!
通じてる、多分!
リリンはみんなを起こして戦闘に備えているだろうが、気づいたことに気づかせるわけにはいかないから多分テントから出てこない。
そして、盗賊共はリリンが寝付く頃を狙って襲ってくるだろう。
それまでおよそ30分といったところか。
「それで、何かあった?」
「何も。」
「そう。」
「それよりも、これどうかな?」
「どうって?」
「右のほうがいいのか、左の方がいいのかってこと。」
そうとは聞こえない会話の中に情報を忍ばせる。
さっきまで塗っていた御守りでどちらがいいか聞いてる風にしつつ、目線で外側にやりどちら側の対処するかを示す。
「それは私から見て? それともそっちから見て?」
「俺から見て。」
「そうね……右かしらね。」
「右だな。」
一気に全員が武装すれば気づかれたと悟り逃げる可能性もなくはないが、残念ながら今回はそれは望めない。
敵は16に対してこっちは10人で、女ばかり。
盗賊からしてみればこんないい獲物逃すはずがないだろう。
向こうのほうが人数が少なければもしかしたらがあるかもだけど。
だから、まずはこっちから奇襲を仕掛けて敵を何人か潰す。
流石に全員を倒し切れるとは思えないから多分幾らかはテントの方に流れてしまうだろうが、そちらはリリン達に任せる。
気配察知持ちが2人も居るし、盗賊の存在には気づいているのだから問題はないはずだ。
目で合図をし、一気に飛び出す。
「今すぐここを立ち去れ! さもなくば痛い目を見るぞ!」
一応警告。
ありえないとは思うけど、念のためね。
一般人の可能性がミクロ以下の確率であるから、本当に一応だ。
そして、やはりありえなかったようでこちらに向かって走ってくる。
「警告はしたからな!」
殺しはしないように収束を甘くしたバーストブレッドを放っていき盗賊を倒していくが、流石に全員を倒しきれない。
蒼井が右に、俺が左に出たがさっきの位置における前と後ろの方は対応出来ずテントに接近されてしまう。
「馬鹿め! 2人きりで倒し切れると思っていたのか? お仲間を死なせたくなければそこを動くんじゃないぞ!」
抜けていった盗賊はテントのみんなを人質に出来ると思ったのか、調子に乗った事を言っているが、馬鹿なのはお前らだ。
どこの世界に仲間に知らせずに2人だけで対応しようとする冒険者がいるというんだ。
「ぐはぁっ!?」
テントから飛び出したレイダさんによって馬鹿な盗賊は倒される。
突然の出来事に動揺した隙に残りの盗賊も全て倒す。
はぁ……全く迷惑な奴らだ。
こいつらの処理をどうするか話し合わないといけないし、明日は寝不足だなこりゃ……。
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