第968話 違うドキドキなんですけど。的なお話
昼食を終え再びの移動。
この移動では街が近いからか、それともこの辺の治安が良いからなのか、はたまた冒険者なり軍なりが度々魔物を狩っているからなのかは分からないけど、何事もなく進んだ。
そんで休憩の時間。
この休憩は1時間の狩りの時間でもある。
まあ、今日は俺の番じゃ無いんだけどね。
というわけで、取り出しますは彫刻刀。
そろそろマジでどうにかしないといけないしな、これ。
なんとかって辺境伯領の領都……名前忘れちゃった。
ごめんね、辺境伯さん。
その辺境伯領の領都の所で買った御守りなんだけど、まだ渡せてないんだよね。
まあ、領都ではあんな騒ぎがあってそんな余裕も無かった……というか嫁達に襲われたし。
その後の城砦都市でもそんな時間無かった……というか嫁達に襲われたし。
そんなわけでまだ出来ていなかったりします。
なのでこのタイミングで完成させたいと思っているんだけど、蒼井とユキノの分はどうしよう?
嫁達の方はいいんだよ?
髪の色とか瞳の色、肌の色なんかを合わせて名前を彫ればいいんだから。
でもさ、この2人のはどうしたらいいの?
名前って彫るべき?
それとも彫らない方がいい?
彫った場合誰の名前にすべきなの?
うーむ、発案者なだけあって決まりがないからなぁ……適当でいいかもしれないけど、そういうのもどうかと思うし……。
だめだ。
思いつかねぇ。
しゃーない。
ここは素直に彫らないでおこう。
流石に俺の名前を彫るわけにもいかないしな。
さて、まずは……まずは?
彫刻刀取り出したけど、まずは色を塗ることから始めた方がいいよな?
彫ってから塗ると絵具が彫った溝を埋めてしまって名前とかよく分からなくなりそうだし。
そうなると、乾かす時間とかも必要だろうからこの彫刻刀は今日は使わないよな?
……仕舞うか。
せっかく出したのになぁ……。
それじゃ、気を取り直して色を塗るか。
ルナは……あ、狩り組だった。
……グダグダだな。
御守り、仕舞うか。
結局この休憩時間では特筆すべきことはなく、普通に本読んだり、武器の手入れをしたりして時間を過ごした。
狩りを終えて帰ってきたみんなはそこそこの戦果があったみたいで、ゴブリンが数匹、コボルトも数匹、オークとオーガがそれぞれ1匹ずつだそうだ。
異世界のど定番魔物だな。
そういえば、オークとかオーガとかはまだ分かるけど、ゴブリンとか買い取ってもらった後はどうなるのだろうか?
前にも気になってたりしたが答えは出ずじまいだったしなぁ。
だってゴブリンってなんの素材にもならないじゃないか。
本当に、なんに使うんだろうなぁ……?
みんなが狩った魔物をストレージに放り込んだ後は再び移動の時間。
適度な休憩を挟みつつ移動をしたが、やはり町や村なんかには遭遇することはなく野営をする事に。
いつも通りの夕食も終え、後は夜の見張りをしつつ睡眠を取るだけ。
ルナに絵具を借りて見張りの時間で色を塗る。
こういう時気配察知持ちがいると便利だよな。
今回はリリンと一緒だからなおのこと安心できる。
そうして色を塗っている時に、ふと気づいた。
「リリン、そろそろ交代じゃないか?」
「ん。」
盗賊がこちらを見ていることに。
気づいたことに気づかれないように演技をしつつ、位置の把握を行う。
数は16か。
意外といるな。
本来は緊張すべき状況なんだろうな。
だけど、どうしよう。
俺、珍しくフラグ回収ができたことに興奮してる。
違うドキドキなんですけど。
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