第867話 私が絶対に助けてあげるから! 的なお話

〜リリン視点〜


「しまった……。」


ここ、カインの家だ。

間違えてしまった……こんなことしてる暇ないのに……今はとにかく急がなければいけないのに……。

でないとレントが……。


「え? ここどこ……迷宮じゃないし、何処かの建物……?」

「帰還結晶で転移出来るのは迷宮前のはずじゃ……。」


ユーリ達が何か言っているがそれに付き合ってる暇ない。


「場所間違えた。もう一度跳ぶ。」


ユーリ達を掴みもう一度跳ぶ。

次こそは間違えないようにしないと。

跳ぶ場所はアデラードの家で私にあてがわれた部屋。


「ここで待ってて。」


無事にアデラードの家に跳べた。

次はアデラードだ。

今アデラードはどこに……でもその前に3人のことを頼まなければ。

勝手知ったるアデラードの家だ。

道に迷うことはない。

そして人を探していると運良くリゼットを見つけることができた。


「リゼット。」

「リリン様? 何故ここに? ダンジョンに行っているはずでは?」

「私の部屋にいる3人を任せた。」

「え、はい?」


これで大丈夫。

後はアデラードに知らせるだけだ。

アデラードの家を出てアデラードを探す。

この時間ならきっとギルドにいるはず。


「加速。」


もっと、もっと速く!

ここじゃ人が邪魔だ。

上なら、人がいない。

やっぱり、屋根の方が早く移動できる。


「あ。」


こんな所に人がいるとは思わなかった。

屋根にへばりついて民家を覗く奴が居たけどつい踏んづけてしまった。

でも、それもどうでもいい。

今はとにかく急がないと。


ギルドに着くのに数分くらい?

そんなにも時間がかかってしまった。

こんな所で時間を使っている暇ないのに。


「アデラード、助けて!」

「り、リリン!? どうしたの!? 今迷宮にいるはずじゃ……。」

「レントが……レントが!」

「レントがどうしたの!? 中で何かあったの!?」

「レントが消えた!」

「は? もう少し詳しく教えてくれない?」


何を言えばいいのだろう?

レントが突然消えた。

分かってるのはそれだけなのにこれ以上どう説明すれいい?

もどかしい……早くレントを助けに行かなければいけないのに……。

こんな事ならイリスを連れてくればよかった。

イリスならきっとうまく説明できるはず。

でも、イリスを連れてきてたら絶対遅くなる。

どうすれば……。

そうだ!


「え、ちょ、何?」

「今から跳ぶ。」

「はい? 跳ぶって何?」


アデラードの家に戻って説明をイリスに任せて私は迷宮に戻る。

魔力消費が多くて少し頭がクラクラするけど、そんなこと言っていられない。

今もレントが危険な目にあってるかもしれないのだから。

アイテムバッグからMPポーションを取り出して飲み干す。


「おかえり、リリン。今から捜索するけど、大丈夫?」

「問題ない。」


多少疲れているけど、そんなの問題にするほどじゃない。

待ってて、レント。

今助けに行くから。


〜アデラード視点〜


突然の事に動揺したけど、ふと思い出す。

そういえばリリンは転移魔法を使えた事を。

以前訓練の計画を立てる参考にしたいからとステータスを教えてもらった時に、写しの紙に書いてあったはず。


「えっと、それで中で何があったの?」

「私達もよく分からないんです。ただ、レントさんがナタリアさんと一緒に突然消えてしまったんです。2人の足元が光ったと思ったら急に消えてしまって……。」

「それって転移の罠!? あれは60階層以降の筈だよ!?」

「でも、本当に突然消えてしまったんです……。」

「それで、2人が消えたのはどこ?」

「20階層です。ボスを倒した後宝箱から出た記録結晶を持って、何か話をしようしてたと思うんです。その時に……。」

「分かった。私は捜索の準備をするから、君達はこの家で休んでて。家の人間には言っておくから。」

「あ……。」


こんな時こそあの人の出番だろうに、いったい何してんのさ!

まさか気づいてない?

エリーナに準備を任せたら一度神殿に行っておこう。

きっと力になってくれるはず。

待っててね、レント。

私が絶対に助けてあげるから!

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