第852話 って、ボス部屋じゃねーか! 的なお話

色々と、フラグを立ててみたものの今のところなにもない。

小部屋にモンスターハウスになる罠は備わっていないし、現在探索中の他の冒険者とも遭遇しない。

つまらない。

いや、冒険者は別にどうでもいいしモンスターハウスになる罠も別に無くてもいいんだよ?

でも、少しばかり期待してしまう。

こういう所で他の冒険者と遭遇して情報交換とかそういうのに少しばかり憧れてしまうし、モンスターハウスになる罠も好奇心故に遭遇してみたいと思ってしまう。

何もないならないで助かるからいいんだけど、人の心は複雑怪奇。

望む心と望まない心が同居する事もあるのだ。


「魔物。数は4。」


魔物のお出ましだ。

数は4との事だしさっさと処理してしまおう。


「カタカタカタカタ。」


遭遇した魔物はスケルトンだが、皮鎧やローブなんかを纏っている。

そしてどいつもこいつも頭蓋に穴を開けている。

ひょっとしてこいつら、天井から剣やらなんやらが降ってくる罠で死んだ冒険者の死体か?


「スケルトン・シーカーですわね。」

「スケルトン・シーカー……ですか?」

「生前の習性が残っているのか、ダンジョン内の宝箱を開けたり魔物と戦ったりします。」


生前の習性……やっぱりこいつらはここで死んだ冒険者の死体が魔物となった存在なのか。


「と、言われておりますが、本当のところは分からないそうです。」


あれ?

違うのか?


「逸れた仲間と合流しようとした冒険者が仲間の装備を持つスケルトンと遭遇した……という話は聞いたことがありませんから。他の魔物同様ダンジョンから生まれたのか、それとも死体が魔物になったのか……それを証明する方法がありませんので。」


なるほど。

悪魔の証明みたいなものか。

可能性はあっても証拠がないので証明しようがなく、推測するしかないと。


「それよりも……もう終わってしまいましたわ。」

「あ……。」


話している間に戦闘が終わってしまったようだ。

なんか、すごくもったいなかったな。

実際に戦ってみればスケルトン・シーカーの出自に関する情報を何か得られたかもしれないのに。


「ん。」

「サンキュ……って、これ本当に出たの?」

「ん。」


リリンが魔石とドロップアイテムを持ってきてくれたのだが、そのドロップアイテムがおかしい。

湾曲していて恐らく肋骨の一部と思われる骨、これはいい。

いや、良いわけじゃないんだけど、納得はできる。

でも、なんでポーションなんて出てくるんだ?

どう考えてもおかしいだろ。

だってスケルトンに治すべき場所なんてないのだから。


「先程も言いましたが、スケルトン・シーカーは宝箱を開けます。その為、時折その中身と思われる物がドロップアイテムとして出現しますの。」

「あ、そういうことなんですか。それならいっそ、出てくる魔物が全てスケルトン・シーカーならいいのに。わざわざ罠の危険性のある宝箱を開けずに済むから。」

「ドロップアイテムは必ず落とすわけではありませんので、それだと貴重な品を手に入れられなくなる可能性がありますわよ?」

「あ……ままならないもんだなぁ。」

「堅実が一番ということですわ。」


そしてもう少ししたらセーフティーエリアという所で……。


「あ……なんか踏んじゃった。」


ユーリが何か踏んだ。

多分罠。


ーードン! ゴロゴロゴロ!

ーーゴドン! ゴロゴロゴロ!

ーーズドン! ゴロゴロゴロ!


後方から何か重たい物が落ち、そして転がってくる音が聞こえる。

うわ〜、定番だ〜。

振り返ってみると、かなり近い。

慌ててダッシュで逃げる。

ひょっとしたら受け止められるかもしれないけど、音は3つ。

つまり1つ止めたとしても後から迫ってくるもう2つの大岩の衝撃に吹っ飛ばされ潰される可能性がある。

流石に3つ分の衝撃は無理だ。

破壊も同様。

なので逃げるしかない。


そうして飛び込んだ先は大きめの扉の部屋。

って、ボス部屋じゃねーか!

息が上がってる人が半分くらいいるんだけど……どうしよう?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る