第835話 下手したら大惨事になっちまう……。的なお話
ボス戦前の小休止。
みんながみんなそれぞれに体を休めている中、俺はといえば……。
「うん。知ってた。こうなるって知ってた。」
「僕も手伝うから早く終わらそ?」
せっせと白い粉を容器に入れてのポ◯リ擬きの作成。
最初は蒼井だけだったんだ。
だけど、俺が作り始めると私も私と増えていき、気づけば天装含む全員から要求されたんだ。
おかげで塩砂糖の分量を量ってせっせと作るはめに……。
セフィアが手伝ってくれて助かる。
分量を量る時間が半分になるから。
ぶっちゃけその時間が1番長いし。
「蒼井。氷よろしく。」
「りょうかーい。」
水を注ぎ、果汁を混ぜて完成したが冷たいほうが美味しいので蒼井に頼んで氷を出してもらう。
それをみんなに配ってやっと休める。
ふぅ。
大した労力ではないけど、周りが休んでる中作業してるってのは精神にクるものがあるなぁ。
そして小休止が終わりいよいよボス戦。
一本道を抜け、広間に出るとボッボッと火が灯る松明。
やはりこの演出はいいね。
凄くらしいもの。
靄が集まりボスが体を形成する。
出て来たのは殺戮ウサギ。
恐ろしい見た目をした無駄にでかいウサギだが、恐ろしいのは見た目のみで本体は弱い。
だけど、1個だけ注意すべき点があって、
一定確率で防御無視攻撃を放つというもの。
所詮はウサギと油断してこれにやられる冒険者もそれなりにいるらしい。
そんな殺戮ウサギの相手をするのはユーリ、レヴィ、イリスさんの3人のみ。
別に俺達が参加してもいいんだけど、本人達が折角だからと3人だけで戦いたいと言い出してそれを認めた形だ。
まあ、後ろにナタリアさんみたいな高ランク冒険者が控えてるからこそ出来る事なのだろう。
いざという時に助けてもらえる。
そうおもったからこその冒険なのだろう。
でもまあ、殺戮ウサギ自体はDランクの下の上から中の下といったところらしいし、問題は無いだろう。
「会心の一撃っていうスキルがあって一定確率で強力な攻撃放つから注意しろよなー。」
「分かりました!」
「ちょっ、それもっと早く言ってよね!?」
戦闘が始まってから言うのを忘れてたって思い出したんだよ。
誰だってあるだろ、そんな事。
俺の忠告を聞いたからなのか、さっきまではレヴィが受け止め、その後にユーリとイリスさんが攻撃をするってパターンだったけど、動きを変えて、ユーリが攻撃しつつ殺戮ウサギを引きつけ、意識から外れた頃にレヴィとイリスさんが大きな一撃を加える。
その後ユーリが2人の方に攻撃がいかないようにチマチマと攻撃をして意識を自分に向ける。
そしてまたレヴィとイリスさんが攻撃をする。
そういう戦法になった。
所謂避けタンクとか言う奴か?
油断せず、落ち着いて戦えば所詮は雑魚でしかない殺戮ウサギである。
3人はほんの3分足らずで殺戮ウサギを倒してボス戦は終了した。
「お疲れ。戦ってみてどうだった?」
「思ったよりも楽に倒せたので怪我をせずに済んで良かったです。それで、確か今回のボスはレントさん達も戦ったんですよね? 参考までにどうしたのか教えてください。」
イリスさんがまたしても聞いて来た。
多分、聞けばまた答えてくれるだろうと思われてる。
でも不思議と面倒だとは感じないのは、こちらに好意を持ってくれてるからなのかも。
「俺達のは参考にならないと思うけど、それでもいい?」
「はい!」
「あー、俺達の時は、最初に飛びかかって来たんだけど……」
「来たんだけど?」
「あまりにも遅いせいでつい蹴っ飛ばしちゃって……それだけで牙も折れちゃってて、追撃したらあっという間に終わっちゃったんだ。」
「凄いです! あの巨体を蹴り飛ばすなんて! 本当に凄いです!」
言われてみれば確かに!
いつの間にか俺、そんなレベルに達しちゃってたんだなぁ……。
アリシアさんの事だから里帰りとか言って日本に1日だけ連れてってくれるかもしれないと思ってたけど、これは注意した方がいいのかも。
日本だと下手したら大惨事になっちまう……。
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