第827話 それじゃ行くとしますか。的なお話

再度入ると同時に意識を集中させる。

黒い靄が発生しそれが集まっていくが俺はそれを無視して意識を集中し、魔力を集めていく。

そして遂にバーミさんが姿を現した時、俺の右手にも変化が現れる。

右手を手刀の形にしているが、それに沿うようにして魔力が障壁を作っている。


レイダさんの透晶魔装に俺の千変魔杖術。

この2つはどちらも魔力を集め形状をを変化させて武器にするというもの。

だからだろう。

少しだけ、魔力障壁や魔力の集中が速くなった気がする。

……気がするだけかもしれないが。

現状ではこれが限界だけど、もっと鍛練を積めば魔力の剣とかも出来るだろう。


少しだけ後ずさったバーミさんが突進をしてくる。

右斜め後ろに一旦バックステップして正面からズレ、右足を踏み出しすれ違う形にして居合斬りの要領で手刀一閃。

首の下から胴体半ばに向けて一筋の刀傷が生まれるが、残念ながらリーチが足りず一撃で倒すことは出来なかった。

とはいえ、既に死に体。

ダメージによってのたうち回っているバーミさんにトドメを刺す。

これで終了。

みんなの所に戻ろうとしたら、イリスさんが駆け寄ってくる。

丁度いいし、質問に答えておこう。


「大体こんな感じかな。剣を使っていたら多分最初の一撃で終わりだろうけど、今回はちょっとした実験も兼ねてたからあんな感じだな。」

「今のなんですか!? 手刀で斬り裂いてましたよ!?」

「あー、まだ練習中の技だし、今は秘密って事で。ちゃんとした技になったら教えるよ。」

「本当ですか!?」

「え、あ、うん……本当だよ?」

「絶対ですからね!」


うん?

そんなに気になるのかな……?


「魔力障壁の応用ですわね?」

「そうです。」

「何故すぐに教えなかったのですか?」

「いやまあ、不完全なんで教えるのが恥ずかしいんですよ。」

「不完全でも、基礎くらいなら教えられるでしょう? それに、いずれ必要になる技術ですし、早めに知って損はないはずです。」

「うん?」


あれ?

なんだろう?

なんか、会話が噛み合ってるようで噛み合ってない気がする。

俺は不完全な技だから詳細を教えるのが恥ずかしいって言ってる。

理想は剣なのに実際出てきたのは手刀に纏わせる程度であまりにもしょぼいから。


「あの、技の詳細を教えるって話ですよね?」

「はい? 技を伝授するって話ですよ?」

「……………。」

「……………。」


……どこのア◯ジャッシュだよ。

全然噛み合ってねーじゃん!


「えーと、では、ただ単に未完成なのが恥ずかしくて教えなかったと?」

「そうです……完成したら技を教えないといけないですかね?」

「約束してましたし、教えないとダメでしょう。」

「デスヨネー。」

「ですが、魔力障壁の応用ならば普通に説明すればよかったのでは? 実際、使えるのに越したことはないですから。」

「……確かに、これがあればいざという時に身を守ることが出来ますし、さっき自分がやったように攻撃に応用することも出来て便利です。でもこれ、それなりに練習が必要ですよね? イリスさん達にはまず、逃げきれるだけの体力、相手の動きを見る目、実戦経験、戦闘技術、それらを磨いた方がいいと思うんです。魔力障壁はあくまでも身を守る手段の1つでしかないですから。」

「そういうことですか……。」


それに、守りを魔力障壁頼りにして、その所為で逃げれない躱せないってなって死なれたら嫌だからね。


戦闘があっという間に終わったということもあり、休憩なしでそのまま探索再開になった。


「さて、それじゃ行くとしますか。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る