第826話 再挑戦ボタンとか無いかな? 的なお話

黒い靄が集まってトライデントボア・バーミリオンを形成するといういつもの。

それを見たユーリ達は武器を構えて戦闘に備える。

そして俺達は扉の近くで見学する。


ザシュッ、ザシュッという最初に攻撃する前にいつもする動作。

もはやトライデントボア・バーミリオンソムリエと言えるじゃないか? ってくらいには何度も戦った俺達だから何をするのか分かるけど、ユーリ達はそうではないようで、構えたままだが、少しばかり腰が高い。

迎撃するにせよ、回避するにせよ、まずは腰を落として即座に反応出来るようにすべきなんだけどな。


「ブモオオオオオオ!」


気勢をあげるかのように叫び、突進をするバーミさん。

その突進を見てから回避をする3人。

幸い距離が離れているので難なく躱せたが、バーミさんの足がもっと速かったり、距離が近かったら危なかったかもしれない。


バーミさんはしばらく進んだところで停止し、方向転換、再度突進を敢行するが、躱した後すぐに近づいていたレヴィがスピードに乗る前に片手斧の二刀流で受け止める。

そうして動きを止めたところですかさずユーリが片手剣の二刀流で斬り裂く。


「トドメです!」


ユーリの後にイリスさんも続き、飛び上がってバーミさんの脳天に深々と槍を突き刺してトドメを刺した。

霞と消えるバーミさんに慌てる事もなく着地をして魔石とドロップアイテムを回収した。


「それなり……といったところですわね。」

「そうですね。」

「ちなみにですが、レントさんならどう戦っていましたか?」

「それって、俺1人だけですか?」

「はい。」

「まあ、普通に突進を躱しつつ首を斬り落として終わりですかね。もしくは新技開発の実験台かな。むしろそっちの方が多いですね。」

「……以前トライデントボア・バーミリオンの素材を山ほど持ち込んだという噂がありましたが、それが原因ですか。」

「そんな噂あったんですね〜。」


噂というか真実なんだけど、まあ、確証がなければ噂にしかならないか。


「終わりました! これが今回の魔石とドロップアイテムです。」

「ああ、それは3人が持っててよ。3人で倒したんだしさ。いいですよね? ナタリアさん。」

「ええ。」

「ありがとうございます。」


戦闘が終わり、ハイタッチした後こっちに戻って来た3人。

俺達と天装さん達とは報酬に関する事は既に話し合っていたが、3人に関してはどうしようかね?

とりあえず今回のは戦果は3人だけのものだからそのまま持ってるように言ったけど、次からはどうしようか?

それは次の休憩か、野営する時にでも話し合うか。


「ところで、どうだった? 私達の戦い。」

「そうね……少なくともランク通りの実力はあるという事は分かったわね。相手が弱すぎたってのもあるから強さの底までは分からなかったけど、罠にさえ気を付ければ20階層までなら遅れは取らないでしょう。」

「ありがとうございます! それで、もしもレントさんが戦った場合だと、どうしてましたか? 参考までに教えてくれませんか?」

「俺なら、か。」


うーむ。

さっき言った事をそのまま伝えてもいいんだけど、俺まだ今回1度も戦闘してないんだよな。

このままじゃ俺はただの荷物持ちだし、いっそのこと、ここらで軽く戦っておくべきじゃないか?

それに、ちょっと試したい事もあるし。


「じゃあ、ちょっと戦ってみるよ。いいですか、ナタリアさん?」

「まあ、少しくらいならばいいでしょう。」

「ありがとうございます!」


よし!

戦っていい事になったし、早速やろうか。

あ、でも戦う為にもまずは1度出てから再度入らないと。

この辺は少し面倒だよな。

再挑戦ボタンとか無いかな?

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