第814話 またやっちゃったよ。的なお話

さて、それじゃみんなを起こして朝食でも食べるか。

窓を閉めて、と。


ーービタン!

「あ痛っ!」


ん?

え、何?


「ちょっ、なんでもう閉まってるのよ!?」

「フラン? どうしたんだ? 忘れ物でもした?」

「え、あー、いやその……こ、これ……記録結晶の説明書……渡すの忘れてて。」

「そうか。それ届けに来てくれたのか、ありがとな。」

「べ、別に、私が忘れてただけだし感謝される事じゃないわよ! そ、それじゃ、私は今度こそ行くからね!」

「今度は忘れ物ないよなー?」

「う、うるさい! もう無いわよ!」


そう言って、今度こそ本当にフランは出て行った。


「レント……? 誰か来てるの……?」

「起きたか。ああ、さっきまでフランがな。その辺のことは朝食を食べながらでもするから、早く服着て。俺はみんなを起こすから。」

「あ、うん。」


みんなを起こし、着替えをさせている間に俺はフランから受け取った説明書を読む。


『記録結晶の使い方


記録結晶は記録した地点へと所有者と所有者と繋がっている者を転移させる


所有者として登録するには未登録の記録結晶に最初に魔力を流した者が登録される


記録されるのは魔力による所有者認定がされた後に行った場所が対象となるため基本的には手に入れた階層から記憶される(今回は特別に予めレントで所有者を設定し、到達階層も10階層にしてあるわ)


記録する方法は記録したい地点へ行きその場で記録結晶に魔力を流すこと


使用する場合は記録結晶に魔力を流し『転移』と唱える


サブ使用者は最大で2人まで設定可能


設定するには所有者が持つ結晶にサブ使用者設定する者に触れさせ、サブ使用者に魔力を流させながら所有者が『登録』と唱える事で設定することができる

(これは、所有者が死んだり、昏倒してたりといったいざという時の為の保険ね)


所有者登録は1度しか出来ず、所有者が登録された記録結晶は仮に持ち主が死んだ場合でも登録は消えず、新たに所有者を登録することはできない』


説明書にはこう書かれていた。

この()で括られたのは後から書き足されたようで恐らくはフランが書いたものだろう。

意外と可愛い字してるんだな。

そして、フランが書き足したという事はこの説明書自体はフランが書いたものじゃないという事になる。

俺だけに当てた説明書なら全部フランが書くだろうし、という事はドロップする際にはこの説明書も一緒にドロップするという事なのだろうか?

それはそれで見てみたいが……困ったな。

仮に説明書も一緒にドロップするならば使用方法はそれで知った事になるが、そうでないなら鑑定して使用方法がわかったという事になる。

説明書があると言って、一緒にドロップしなかったり、鑑定してもらったと言いつつ説明書もドロップした場合は怪しまれてしまう。


「レントー?」


天装さん達にはどっちを言えばいいんだ?

外れたら怪しまれる……。


「レントってばー。」

「ん? なんだ? どうしたんだ?」

「なんだって……みんな準備できたよ?」

「ああ、悪い。ちょっと考え事してた。」


その辺も相談しよっと。


蒼井、ユキノ、リナさんの他の部屋に泊まってたみんなと合流して朝食へ。

みんなと言いつつ3人しかいないのは気にするな俺……気にするのは精神安定上良くないぞ。

そういう関係の人の方が多いとか思っちゃダメだからな。


「これ、フランが朝来てくれたんだ。到達階層を記録してそこに転移出来るんだって。」

「「ええええぇぇぇぇぇぇーー!!!」」

「うわっ! 声大きいですよ!」


アデラードさんとリナさんが大声を出して驚く。

パーティメンバーはリリンという転移持ちが居るからかそこまで驚いていない。

ダンジョン経験が浅いからそんなのあるんだーくらいにしか思ってないかもだけど。

そしてアイリスさんはダンジョン自体に詳しくないので何が凄いのかも分かってない様子。

小首を傾げる仕草がかわいい。


「いやだって、そりゃしょうがないじゃない! だって、これ……」

「あの、まだ周りに知られるとあんま良くないんで、声小さく出来ません?」

「あ、ごめん……。それでこれ、本当なの?」

「フランはそう言ってました。」


声を小さくと言ったからか、アデラードさんは身を寄せてくる。

となれば当然みんなも同じようにして小声でも聞こえるように近づく。


「それでこれがその説明書なんですけど、ちょっと相談いいですか?」

「え、相談?」


みんなが説明書を読み終えたタイミングで説明書と使用方法についての相談をする。


「そんなの簡単だよ。私が調べたから大丈夫とでも言えばいいよ。そう言えば使用方法について知ってても不思議じゃないし、仮に説明書も付いて来たとしてもその時は安全性を調べたとでも思ってくれるから。」

「なるほど。」


みんなもその意見に納得のようでうんうんとうなずいている。

アデラードさんほど信用のある人が言えば普通は信じるか。

人格はともかく。

結構いい加減なとこあるし。

まあ、そこがいいところでもあるんだけど。


「相談乗ってくれてありがとうございます。それじゃ、そろそろ行きましょうか。」

「そうだね。」


そろそろ天装さん達と合流した方がいいだろうし。

…………ところで、どこに何時に集まればいいのかな?

またやっちゃったよ。

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