第812話 そういう流れになるよね? 的なお話

夕食も食べ終わるというタイミングでお客さん。


「レントさん! 終わったっすよ!」


アイリスさんがアイテムバッグを提げて駆け込んできた。

終わったというのは頼んでおいた防具のメンテだろう。


「終わったっていうのは防具の件ですよね?」

「はいっす! どこか変なところは無いか確認して見てくださいっす。」


アイテムバッグから取り出し、各自に渡していき、最後に俺のとなった。

受け取った防具を広げてみると、デザインが前と少しばかり変わってる。


「どうっすかね? 少しでも動きやすくなるように少し調整してみたっすけど……大丈夫っすか?」


そういう事らしい。

ただそうなると実際に着てみない事にはなんとも言えないので一言入れてから着てみる。

着てみたが特に変なところは無し。

動きやすくなるようにという話だが宿の食堂じゃあんまり動けないけど、でも腕を上げてみたり、軽く回してみたり、振り下ろしてみたり、横に動かしてみたり。

後はその場で体操をしてみたり。


あ〜た〜らしい〜あ〜さがきた! き〜ぼ〜うの〜あ〜さ〜だ♪


体操で1番初めに浮かぶのはこれだよねやっぱ。

日本人だし。


「うん。違和感ないし前よりも動きやすい気がする。特に肩周りと腰回り。」

「本当っすか?」

「ほんとほんと。」


肩周りは腕が上げやすい気がして、腰回りは体を捻りやすい気がする。


「メンテだけでよかったのに、調整までしてくれて……本当にありがとう。」

「いえいえそんな……好きでやった事っすから。」

「ところでアイリスさんは夕食は?もしも食べてないなら奢るよ? 防具のお礼をしたいし。」

「まだっすけど、別にそんなのいいっすよ。」

「遠慮しないで。レイちゃん、注文いい?」

「はーい。今行きまーす。」

「というわけで席座って。」

「強引っすね。分かったっすよ。それじゃ、ご馳走になります。」


アイリスさんが席に着いたところで再び来客。


「ふぅ〜やっと仕事終わった……。あ、レイランちゃん、まずはエールを大ジョッキで。」


全く淀みのない動きでさも当然とばかりに席に座りお酒を注文するアデラードさん。

座ってるのはもちろん、俺達のテーブルの椅子。

今更か。

そしてリナさんがうちの上司がすみませんみたいな感じで頭を下げてから席に着く。


「お疲れ様です。仕事の方はもういいんですか?」

「あー、うんー。大体終わったかなー。一昨日に狩猟大会の素材を売って、昨日はその利益の集計や確認その他諸々。今日はその利益の用途に関する会議とかだねー。後は備品の買い替えや修理に関する書類の承認とか関係各所への感謝の品を贈ったりとかかな。でもそれも終わったからひと段落ついて、なんとか来れたよ。明日からまた暫く会えないからなんとしても来たかったんだ。」


なにそれ、めっちゃ嬉しいこと言ってくれるんですけど!?

俺に会いたいからと仕事を頑張って終わらせてくれたとか、普通に嬉しいんですけど!?


「リナさんは?」

「私の方は基本通常業務でしたからそこまでじゃないですけど、集計やらなんやらで人手を取られたのでその分の仕事を振られたりしましたね。あ、私もレントさんに会いたくて頑張りましたよ?」

「そう……。俺も、ダンジョンに行く前に2人と会えてすごく嬉しいです。もちろん、アイリスさんもね。」

「あう……私も、会いたかったっすよ……?」


こうして訪ねてくるのはすごく嬉しく、愛されているという実感が湧いてくるというもの。

本当は明日に備えて早めに休もうと思っていたけど、明日からまた暫く会えないわけだし……その……なんだ。

まあ、そういう流れになるよね?


「レント!」

「「「っ!?」」」

「……………お、お邪魔しました〜。」


なんか、途中でフランがやって来たがすぐに帰っていった。

普通は気まずいよね。

……さて、それじゃ再開するか。


「え!?」


それはそれ、これはこれです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る