第810話 成功と言えるだろう。的なお話
飲み会も進み、話の流れでランさんは自分についてを語り出した。
最初にルナの規格外の胸に興味を持ったので当たり障りのない部分を説明した。
祖母がサキュバスな為にその血の影響で胸が大きくなり、父親が小悪魔族という種族らしく、その血でロリ巨乳となったと。
ところで、小悪魔族ってなんだろな?
名前から察するにやっぱ小柄な悪魔って事だよな。
インプ的な?
まあ、そのうち挨拶に伺うだろうし、その時の楽しみしておこうかね。
その次は俺について。
以前情報がないとか言ってたし、その辺も気になっていたんだろう。
俺に関してもルナ同様当たり障りのない内容を説明した。
親は普通の人(日本的には普通だし)で、成人したので前から少し興味のあった冒険者になってみたこと。
大きめの街、カインに向かっている時に盗賊に襲われ、種族固有スキルでやり過ごしていたセフィアと出会い、そして仲間になり、徐々に仲間が増えて今現在の状態になったって感じだな。
後は、存外冒険者としての素質があってBランクになれたってこと。
そうして、ルナと俺、2人のこれまでを話した流れでランさんについてとなったが……それでいいのか?
「いやあの、話してくれるのは嬉しいんですけど、ランさんって【天装の姫】の情報収集もやってるんですよね? そんな人が簡単に自分の情報を喋っちゃっていいんですか?」
「私も全部話すつもりないよ。そっちと一緒でね。ただ、これから一緒にダンジョンに潜るわけだし、私という人物をある程度知っていて欲しいなって思っただけだよ。ほら、これって親睦を深めるための飲み会な訳だしさ。」
バレてらっしゃる……。
まあ、たったあれだけの内容じゃ全部話してるなんて思うわけないし当然か。
「実を言うとね、私最初は冒険者になろうなんてこれっぽっちも考えてなかったんだ。私の実家は商家でね、普通に家を手伝ってそのまま結婚でもするのかなって思ってたんだよ。で、私が住んでいた街ってギルドで素人向けの護身術とか教えてて、その時の講師として遠征ついでに依頼を受けたビスカが来てて筋がいいとかでスカウトされたんだ。」
「じゃあ、そのままクラン入りしたんですか。」
「ううん。違うよ。」
「え、違うんですか?」
「うん違うよ。その時は断ってビスカは迷宮都市に帰って行ったんだ。私はしばらく地元に居たんだけど、仕入れの為に迷宮都市に行くことになって、そこでビスカと再会したんだ。両親が迷宮都市のクラン、それも貴族の娘がいるところの人と知り合いだと喜んじゃってね。私はそれで両親に売られたの。」
「えーーー!? う、売られたって、どう言うことですか!?」
「当時の天装の姫ってまだ会計面で不安があってね、それで商家の娘の私が顔つなぎ兼、会計士としてクランに入れられたんだよね。後はダンジョン探索で得た物も安く仕入れやすくする為ってのもあって、そういう理由があって、売られたって表現したの。まあ、どっかの変態貴族へのご機嫌取りで売られるよりはマシだったから、受け入れたんだよね。で、いざという時の為に戦闘技術とかを学んでいるうちに、メンバー内でもそれなりに上の位置まで行っちゃって……だったら冒険者として活動した方が儲かるかなって思ったんだ。それが冒険者になった理由。」
そんな理由が……人生色々と言うが、本当に色々あるんだな。
「ちなみに、情報収集とかを担当してるのは商家だった経験で、情報の大切さを知っていたから自然とやるようになったって感じかな。」
「なるほど……そんなことがあったんですね。」
「……という設定はどうかな?」
「は!? 設定なんですか!?」
「さぁ、どうだろうねぇ? 信じるも信じないもあなた次第って奴だよ。」
にししと笑うランさん。
全く……。
「信じますよ。ここで嘘を言っても何にもなりませんし、まあ、嘘だったとしても困ることはありませんから、だったら疑うよりかは信じた方がいいですからね。後は、ランさんなら騙して何かしようとする人じゃないと信じてますから。」
「な、ななな、急に何を言ってるのさ!?」
「どうしたんですか? 顔赤いですけど、酔いました?」
「なんでもないよ!」
うーむ、ちょっと臭かったかな?
まだそんなに信頼関係を築いているわけでもないのに信じるなんて言ったけど、そう言われるのが照れ臭かったのかな?
こう、これまで揶揄ったりしてたのに信じられたのが、さ。
でも、新鮮かな。
こんな赤面するランさん。
ランさんの新たな一面を知ることができた親睦を深める飲み会は、成功と言えるだろう。
そしていい時間となり別れ、次に会うダンジョン探索の日が楽しみと思える時間で、結構楽しかった。
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