第804話 ゴーレムは崩れ落ちた。的なお話

結果だけ言おう。

無理でした。

そもそも全員というのが間違っている。

ここ訓練場。

全然通路じゃないから普通に広い。

なのに全員が散開して広さを活かして攻めて来たらそりゃどうしようもないというもの。

それにリリン速いし、ユキノいっぱい居るし。

影分身出来るとか言っていたっけ……。


「ちょ、ちょっと無理がありましたわね……。」


俺はリリンに抜かれないようにするだけで精一杯。

ナタリアさんもユキノの分身による波状攻撃の前に沈黙し、アンジェラさんセフィアの連撃を捌くのに四苦八苦。

その結果残りのメンツがわらわらと駆け抜けていったよ。

タワーディフェンス系のゲームなら敗北必至だ。


「次は場所に制限を設けてやりましょう……。でもその前にお昼ですわね。」

「そうですね。」


お昼を食べ、少し食休みをしてから訓練の再開。

午前の反省を生かし、セフィアに両サイドに壁を作って通路を再現してもらう。

道幅はランさん監修。

俺達はあまりダンジョンに挑んでいないから幅までは分からない。

なのでダンジョン経験の多い天装さんにお願いした。


「では、改めてお願いしますわ。」


通路の真ん中に陣取り、後ろにシア、前にアンジェラさん。

攻めてくるみんなを必死になって抑え、その間にシアが援護射撃。

通路の狭さもありなんとか後ろに敵をやらずに済んでおり、そうなるとシアが少しずつ相手の数を減らしていってくれる。

そうして奮闘し、なんとか全員を撃退することに成功する。


「ふぅ〜……つ、疲れた……。」

「そうですわね。流石に数が多過ぎましたわ。」


全部で12人だけど雑魚とは強さが違うし、ユキノがここぞとばかりに分身しまくったからね。

しかし、それもここまで。

一応退けたのでこの4人での連携の訓練は終了。

次はもう1人の盾持ちであるビスカさんを中心にしたメンバーで同様の訓練。

リリン、ユキノ、ランさんは斥候という事もあり外れる。

そしてさっきと似た編成という事になり、ナタリアさんの位置にレイダさん。

俺の位置にアカネ、シアの位置に蒼井となった。

セフィアはマッピングなんかも行うということが考慮されてだ。

本人は残念そうにしていたけど。


1人、3人、全員と数を増やしていく。

1人と3人では余裕で対処することができていたが、流石に全員というのはキツく、アカネ達も苦戦している。

でも壁があるお陰もあり、失敗することは無かった。


それが終わったら一旦休憩。

次は対ボス戦闘を想定しての全員での連携。

ボスはビスカさんが作るゴーレムで代用する。


「大地を揺るがす巨兵よ、今ここにその姿を顕現させよ! クリエイト・ゴーレム!」


3メートルくらいはあるゴーレムで横幅もあり訓練相手としては十分。

ただ、ビスカさんはゴーレムの制御をしないといけないので訓練から外れる。

ゴーレムを制御しつつ戦闘も行うなんていうのは無理だろうし、それもしょうがない。

アデラードさんは複数体を同時に制御していたけどあれは論外だ。

そもそも比較対象が間違っている。


「アンジェラ、受け止めなさい!」

「おっしゃ! ……ぐうっ! 今だ!」


ナタリアさんの指示を受け、ゴーレムの打撃をアンジェラさんが受け止める。

その隙に俺達は左右から削っていき、後ろで遠距離攻撃の準備が済めば後退し、魔法や矢がゴーレムに降り注ぐ。

基本的にこの繰り返し。

重要なのは互いに邪魔をしないこと。

少なくともこれが出来ればひとまずは問題なし。

連携攻撃とかそういうのはもっと時間が必要だし。


俺達が削っている間にルキノさんがアンジェラさんの回復をしているので戦線の維持ができている。

もしも敵が広範囲の高威力攻撃をしてきたら瓦解しそうだが、今回はなし。

ちなみに20階層のボスはCランクのミノタウロスだそうだ。

迷宮のボスといえばミノタウロスだよな。

ミノちゃんはまだ会ったことないし、すごく楽しみだな。


そしてフランベルさんの一撃がトドメとなり、ゴーレムは崩れ落ちた。

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