第805話 全然納得できない! 的なお話

ゴーレムとはいっても、流石にこの人数、このメンバーで相手をすれば楽勝だったな。

精々ゴーレムの攻撃を真っ向から受け止めたアンジェラさんが少し腕を痛めた程度。

そのくらいなら直ぐにルキノさんが治すので戦線が瓦解する事なく倒す事が出来た。


「次は少し人数を減らしましょうか。」

「そうですね。」


時刻は午後4時を少し過ぎたあたりと、訓練も終盤に差し掛かる。

残りはボス戦闘を想定しての訓練で終わりのつもりなのだろう。

そのことに異論はない。

無いけど、ちょっと好奇心。


「ナタリアさん、ちょといいですか?」

「なんでしょう?」

「ゴーレム戦闘、1対1でやらせて貰えないかな?」

「え、急にどうしました?」

「いや、こういう大きな相手と1対1なんて危なくて普段出来ないでしょう? 今みたいな訓練とかじゃないと。」

「まあ、そうですわね。」

「幸い今は制御する人もいて治癒術師も居ますから、この機会にやってみたいなって。ダメですかね?」


大物相手に1対1を挑むなんてちょっと憧れる。

某ハンティングゲームみたいで。

あれ、パーティプレイもいいけど、一騎打ちも楽しいんだよな。

それをリアルで出来るかもというのは興味を惹かれても仕方がないというもの。

要するに、ロマンだよ、ロマン。

…………あ、今ス◯ット・ダンスの漫研少女がバリッとページを破って登場するシーンが思い浮かんだ。


「それはビスカ次第ですわね。ゴーレムを作るのは彼女ですから、魔力量等で出来るかどうか変わるでしょう。」

「じゃあちょっと聞いてきますね。」


そして聞いてみた所、「ナタリアが許可しているのなら1度だけいいだろう。」との返事。

1回だけらしい。

残念。

どうせならリリンが戦うところとかも見てみたかったんだけど、仕方ない。

後でまた交渉してみよう。


許可も取れたので早速開始する。

今回の得物はストレージ内で埃を被りそうな杖。

確かヘビィメタルビートルとかいう魔物の角を使ってるとか言ってたな。

それはそれとして、ビートルと言うくらいだしカブトムシなんだよな?

従魔に出来ないだろうか?

俺も男の子な訳だしやっぱりカブトムシはかっこいいと思うわけですよ。


等と考えている内に遅い足取りでズシンズシンとゴーレムがやって来て攻撃を仕掛けようとしてくる。

俺は駆け出しパンチの下を潜るようにして躱し、そのまま駆け抜ける。

その際にゴーレムのうち太ももに当たる場所を思いっきり殴りつける。


「やっぱ硬いな。」


分かってはいたが、やはり硬く、殴った時の衝撃がまだ手に残ってる。

しかし、あのスピードならまず攻撃は喰らわないし、このままヒットアンドアウェイで攻めていこうか。


振り返り再び殴り掛かってくるゴーレムの攻撃を躱し、今度は胴を殴りつける。

そして地面をグッと踏みしめて止まり、力強く蹴った反動のままにもう一撃お見舞いする。

くぅ〜、手が痺れるぜ。

威力が足りないか?

少しずつ削れてはいるがこれではどれだけ時間がかかるか分からない。


なら、少し手を変えよう。

透晶魔装だっけ?

レイダさんが考えた新技。

あれをやろう。

芯にはこの杖があるし魔力だけでやるよりずっと楽のはずだ。

それに、俺には断罪炎覇という剣に沿って巨大な炎の剣を作る技がある。

あれの経験があるからなんとかなるだろう。


とはいっても、そうやって準備をしている間もゴーレムは攻撃をしてくるので、その都度躱し、反撃をしていく。


所で、俺には1つ悩みがある。

それは杖術についてである。

漫画による知識だけど、杖とは、「突けば槍、払えば薙刀、持たば太刀。杖はかくにも外れざりけり」とかなんとか。

要はただの棒だからこそ、使い方次第で様々な変化をするという事なのだろう。

杖術における杖は乳切り木といい大体乳首くらいの長さの物を使う。

その長さは人によって変わる。

だからだろう……木剣も見方によっては棒であり杖と見ることも出来て、多少短くても杖術の経験値としてカウントされる。

何が言いたいかというと、杖術のレベルが爆上がりしてる……。


そして、透晶魔装を完成させたのがトリガーだったのか、遂に杖術のレベルが最大となりスキルが進化を果たす。


〈スキル杖術が千変魔杖術 (ユニーク)へと進化しました〉


なんで……なんで最初のユニークが杖術なんだよ!?

全然納得できない!

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