クリスマス番外編 クリスマス、昔と今の…

〜第三者視点〜


季節は冬。

師走も半ばを過ぎ、クリスマスまで後わずかとなっていた。

本来ならば既に聴き終えておくべきなのだが、共働きの風見家は子供を連れて買い物に行くことは出来ずこの時間になってしまった。

蓮斗の母はこの機会に欲しがる物を確認し後で買いに来る予定だ。


「「じんぐるべ〜るじんぐるべ〜るすっずが〜なる〜♪」」

「2人とも元気ねぇ〜。2人はサンタさんに何をお願いするの?」

「えっとねぇ、私はお兄ちゃん! お兄ちゃんがお婿さんに欲しい!」

「え、えーと、それはサンタさんじゃ無理かなぁ〜。それに、そういうのは自分の力でなんとかするもんじゃないかな。」

「分かった。自分の力でなんとかする!」


自力でなんとかなるものではないのだが……。

きっとわずか5歳という幼い娘に現実を教えるのはどうかと考えたのだろう。

そうであって欲しい。

そうであるはずだ。


「他には何が欲しいのかな?」

「んーとね……あ! あれ欲しい!」


そうして唯が指差したのはカラフルな装飾があり、可愛らしいリボンがあしらわれた……メイスだった。


「ああ〜アレね。最近人気の……なんだっけ?」


メイスが女子児童に人気な時点で世の中終わってると思うかもしれないが、そういうことではない。


「『魔法修道女マジカルシスター♡マリア!』の『マテリアルメイス』だよ、お母さん。」

「ああ、そうだったわね。」


魔法修道女マジカルシスター♡マリア!』は日朝にやっている某戦う魔法少女人気を受け、よりバトルシーンを派手にしようという考えから生まれた戦う魔法少女のお話である。

「女の子だって強くなくっちゃ」をコンセプトに、修道女見習いのマリアがメイスで悪魔をフルボッコにし、その後に聖なる祈りによって浄化するというのが基本パターンだ。

バトルシーンの効果音が生々しいとか、主人公が悪魔とはいえメイスでフルボッコにするのはどうかとかで各方面で話題になったりしてるが、人気が高く、映画化も決定している。

唯が指差したメイスは主人公のマリアが使っているメイスを模したおもちゃで名前は『マテリアルメイス』という。

そこはせめてマジカルにして欲しかった……。

打撃武器であるメイスなのだからそこはせめて魔法的な何かを使って欲しい。

マテリアルってそれもう完全物理ではないか。

しかしそれを風見母は知らない。

なので変わったステッキとしか捉えていないのは幸いなのだろう。

ちなみに、なりきりシリーズとして『聖女のタリスマン』『見習いシスター服』『癒しの十字架』なんかもあったりする。


「サンタさんがプレゼントしてくれるといいわね?」

「うん!」

「蓮斗は何が欲しい?」

「株券が欲しい。それで配当金で悠々自適に暮らしたい。」

「ど、どこでそんな話聞いたの?」

「公園で遊んでいる時に、ショタっ子尊い……ショタは神が創造した至高の存在……ってブツブツ言っていたお姉さんが、株券があると配当金とかいうお金がもらえるって言ってたよ。後、俺を見てなんかハァハァ言ってた。」

「何それこわい。」


危ないお姉さんが出没するようだ。

至急町内会長に連絡しなくては! と、風見母は考えた。


「そういえば、私もYESロリータ! NOタッチ! って叫んだりしてるおじさんが、木で遊具を作ってるの見たことあるよ。」


どうやらヤバイ連中が出没するみたいだ。

だがNOタッチと言っているのだから事案は発生しないのは良かった。

いや、本当に良かったのだろうか?


後日町内会で話し合われた結果、大人が持ち回りで見回りをすることになり、それが功を奏したのかショタコンお姉さんもロリコン紳士も見かけなくなったそうだ。


閑話休題


「それ以外には何かあるかな?」


株券なんて流石に早すぎる。

それ以前に株式運用なんて無知のまま行うのは危険すぎる。

絶対に与えないと密かに決意していた風見母。

そのことに気づかない蓮斗はう〜んと悩み、そして決めたようだ。


「あれが欲しい! B◯EACHのゲーム! W◯iでやる奴!」

「ぶ、BLE◯CH? えっと、よく分かんないけど、それが欲しいのね?」

「うん!」

「それじゃあ、もらえるようにいい子にしていないといけないわね。」

「うん!」


親子の買い物風景という良くある光景。

会話内容はちょっとあれだけど、確かにあった一幕。

それはおよそ10年ほど前の出来事であった。



〜レント視点〜


「「「おじゃましま〜す!」」」

「「いらっしゃい!」」


保育園かそこらか?

というかまたこれ系の夢かよ。

最近たまに見るな、明晰夢。

えーと、あれは蒼井とアカネと……また謎の金髪少女か。

ま、願望とかが夢に混ざったんだろうな。

子供の頃の嫁達と楽しく遊んだりしたかったっていう願望が。

格好から考えて多分冬。

そんで、周りの電飾から考えてクリスマスか。

……あれ?

なんか、この時は何かがあったような……ダメだ。

思い出せん。


なんて考えているうちに場面が移り変わった。


「「「メリークリスマース!」」」


やはりクリスマスだった。

ツリーがキラキラと輝いているし、子供の頃の俺達はクラッカーを鳴らしているし。

テーブルには某フライドチキンのお店のチキンがあり、他にも美味しそうな料理が所狭しと並んでいる。

確か冷蔵庫の中にはケーキもあったな。

流石にこれだけの量をひと家族で負担するということは無く、いくつかは蒼井の家からの提供もあったはず。


「美味しい!」

「ああ、ほら唯、油でベタベタじゃないか。ちょっとじっとしてろ。今拭くから。」

「んぶぶぶ……ありがとうお兄ちゃん。」

「レント〜私もやってー。」

「ああ、もう。分かったからじっとしてろ◯△◇。」


ん?

今なんてった?

謎の金髪少女なんだけど、名前がまるで分からない。

まあ、だから謎なんだけど、そこはセシアとかでいいんじゃないか?

……夢にツッコんでも仕方ないか。


「はーい、ケーキ持って来たよ。」

「ありがとうおばさん。」

「おば……そこはお義母さんでしょ。」

「ごめんなさい、お義母さん。」


…………ちょっと待って。

本当に、ちょっと待って。

え?

こんな事あったの?

蒼井よ。

そこは風見のお母さんとかだろ。

なんでお義母さんなわけ?

というか、母さんも何言ってんだよーー!?


何がどうなってんのか分かんないが、待ってと言っても全然待ってくれない夢はどんどん進む。

もう少し融通利かせてもいいんだよ?


「じゃ、マ◯カーやろうぜ!」

「いいよ! 今日は負けないから!」


そうして本当にマリ◯ーを始めてしまう幼き頃の俺達。

時間にしておよそ1時間半。

それをずっと見せられることのなんと辛いことか。

しかもまあ、下手くそ。

まだちっちゃい頃な訳だし仕方ないんだろうけど、下手なのがすごくもどかしい。

あーもう!

そこはドリフトを小刻みに使って……あ、そっちじゃない!

そっち行くと……ほらー。

うまく曲がらないと落ちるんだよ。


「そろそろお風呂入っちゃいなさい。」

「「「はーい。」」」


お風呂ということで、一旦ストップしてみんなで…………みんなで!?

って、思い出した!

そうだよ!

この時家族ぐるみの付き合いしてたから、当時は兄妹みたいな感じで風呂とかも一緒に入っていたんだった。

うっわ、恥ずっ!


「なんで男の子ってそんなの付いているんだろうね?」

「知らなーい。」

「ねぇ、ちょっと触っていい?」

「えー?」


え、ちょ、マジで?

やめてくれよ?

マジでやめてくれよ?


「ちょっとだけだぞ?」

「分かった。あ、柔らかいんだ。」


ちょ、マジで触りやがったーー!?


「たーー……あれ? 朝?」



「……って事があったんですよ。」


今はクリスマスパーティーの真っ最中。

今年もエリュシオン邸でパーティーをしている。


「え、それ本当に?」

「多分……。」

「えぇ……何それ、すごく恥ずかしいんだけど……。」


まあ、そうなるわな。

俺だって恥ずい。


「それで、その後はどうなったの?」

「いや、そっからは普通だったはずだよ。夢はそこまでだけど、確かその時はお風呂から出た後、また遊んで、寝る時にサンタを捕まえようとしたけど、結局寝ちゃって捕まえられなかったんだよ。そうだよな?」

「え、えーと……ああ、そうだった。うん。そう。」

「へー。それって、一緒に寝てたって事?」

「まあ、そうなるな。」

「昔の事よ。」


蒼井が恥ずかしいのかほんの少し頬を染めてそっぽを向く。

子供の頃の話は恥ずかしいこともあるし仕方ないか。

普段があんな感じだから、子供の頃とはいえ、凄く仲が良かったのは気恥ずかしさがあるのだろう。

それは俺もそうだけど。


「でもこっちにはサンタはいないから安心して寝れるね。」

「そりゃそうだよ!」

「「「あはははは!」」」


ここ異世界。

クリスマス自体勇者かなんかが伝えたんだ。

サンタなんかいるわけない。



サンタは居なくともサンタになることは出来る。

こっそりと用意していたプレゼントを袋に詰め、赤い服に赤い帽子、そして白いつけ髭を装着してサンタをしよう。

トナカイの角を付けたリゼットさんをお供にみんなの部屋を巡ってプレゼントを置いていく。

アデラードさんの所は気づかれるんじゃないかとおっかなびっくりだったけどなんとか全部配り終えることに成功した。


「リゼットさん、手伝ってくれて助かった。それじゃ、おやすみ。」

「はい。お休みなさいませ。」

「あ、そうだこれ。リゼットさんに。手作りで悪いんだけど、ペンダント。」

「私にですか?」

「そう。」

「ありがとうございます。大事にしますね。」

「うん。それじゃ、おやすみ。」

「はい。」


部屋に入ると、沢山のプレゼントがいつの間にかごっちゃりと積まれていた。


「くすっ。」


多分みんなから。

嬉しいなぁ。

中身を確認するのは明日にして、今日は幸せな気分で寝れるな。

でもその前に、多分来ると思うアリシアさんの為のプレゼントを置いておこう。

唯とレイカーさんの分のプレゼントと手紙も一緒に置いて、と。

これでよし。

さて、寝るとするか。

きっと、明日になればプレゼントが増えている事だろう。

楽しみだ。

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