第734話 眼、減らしました? 的なお話

「さて、それじゃそろそろ休もうか。寝ずの番だけど、2人組で分けると1人あぶれるから2人組だけど、1人が2時間で抜けて新しい人が入り、さらに2時間経つと最初にやってたもう1人が交代って感じでローテーションを組もうと思うんだけどどうかな?」

「それって、1人4時間見張りをするってこと?」

「まあ、そうなるね。」

「ちょっと長い気もするけど、睡眠時間をしっかりとるならそのくらいになっちゃうか。」

「不測の事態が起こった時のことも考えると最低でも2人は欲しいからしょうがないよ。」

「そうね。それでいきましょう。」


そんなわけでローテーションを組んでの寝ずの番です。

気配察知持ちがリリンしかいないからリリンが寝てる時はちょっと不安。

でもそれが普通なんだよな……本当に、ウチはメンバーに恵まれてるよな。

盾職1人もいないけど。


そんな感じで見張りをしていたが、運がいいことに俺が見張りをしている時には魔物と遭遇することが一切なかった。

リリンが気配察知を持ってるからその分他のみんなよりも働く可能性が高いと思って、リリンと被る時間に来るように選んだというのに……。

しかも、俺がセフィアと交代した時に魔物と遭遇していたというのがまたなんとも……。

というか、俺が見張りしてる時って魔物がやって来ることって少ない気がする。

絶対にないってわけじゃないけど、寝てる時に襲撃があったと言われるのはなんだか申し訳ない気になって来るよ。


「それじゃ、朝食の準備をするからレントお願いね。」

「分かった。何がいる?」

「朝食だけど、一杯動くからお肉もあった方がいいかな。だからまずはオーク肉と玉ねぎと……。」


そうして出来上がったのはパン(店売り)とオーク肉のスープとオーク肉入りオムレツにサラダ、それと果物と果実水。

肉は使いつつも重くならないように配慮されたものとなっている。

味はもちろん美味だった。


朝食を終え、食休みも終え、準備をしっかりと整えてから探索スタート。

まずは昨日行ったところまで向かう。

その道中は何もなく平穏なものだった。


「さて、それじゃこれからさらに奥に行くことになる。すぐに何かが変わるといったことはないと思うけど、注意はしていこう。みんな、油断せずいこう。」

「うん。」

「ん。」

「了解。」

「はい。」


……やはりこのネタは無理か。

まあ、レイカーさんが持ってきたのはラノベだし、漫画のネタは無理だな。

アニメも観てないし。

ここにアカネか蒼井がいればツッコミの1つもあったんだろうけど。

ネタを使っても反応がないとつまんないな。

と、油断すんなって俺が言ったんだし、気を引き締めていかないと。


周囲の様子に気を配りながら森のさらに深いところへと歩を進めていくと魔物とエンカウントする。

しかも、これまでと違ってBランクの魔物。

その名もシルバーエイプ。

ヘビィコングの上位種で銀の体毛のゴリラ。

そこまで強くない。


Bランクといっても所詮はゴリラな訳でね。

何遍もゴリラを狩ってきた俺らにとっては大したことのない相手で、特に怪我をするということもなくあっという間に倒し終わってしまった。

いやまあ、普通のゴリラであるヘビィコングよりかも俊敏で強力だったんだけど、やっぱりゴリラはゴリラ。

余裕だったよ。


死体を回収したら再び探索へと戻る。

コボルトロード率いるコボルトの集団や、リザードマンの群れなんかを見かけるが、あくまでも俺達の目的はハードジャイアントだ。

時間のかかりそうな集団や群れとわざわざ戦う必要はない。

それに、時間もないしな。


そうしてハードジャイアントの捜索を続け、そろそろお昼頃という時に、遠くの木の間に大きな影を見つけた。

きっとハードジャイアントだと思って近づいたのがまずかったのだろう。

そいつは木々の隙間からこちらを見てきた。

その、曇りなき一つの眼で。


「えーと、眼、減らしました?」

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