第720話 ウチはいろいろ特殊だからね。的なお話

しばらくの休憩の後、訓練再開となる。

俺達はリリンを先頭にして通路部分から部屋の中の様子を伺う。

中には数十体のゴーレムが徘徊している。

ここまではさっきと同じ。


「リリン。罠は?」

「五ヶ所。入り口付近にはない。」

「そうか。」


罠は五ヶ所。

その場所を中に入る前にリリンから聞いて頭の中に叩き込む。

しかし、残念なことにゴーレムは部屋の外から姿を見せても追いかけて来る事はなく、どうも部屋の中でしか反応しないようだ。

これでは入り口を抜けた少数を一方的に……ということが出来ない。


外から広範囲攻撃で一気にというのもあまり良くはないだろう。

罠の種類が分からない中、不用心に攻撃して発動したとして、それが前の時のような落とし穴だった場合なら問題ないが、毒ガスが噴き出したり、天井が落ちて来るといった、先に進めなくなる、あるいは先に進むのに時間がかかるような罠だったら困る。

だから、魔法ブッパというわけにはいかない。


「どうする? 一当てして引っ張る?」

「でもそれだと時間かからない?」

「安全かもしれないけど、あまり時間をかけるのは良くないわね。それに、引っ張るにしても魔力や矢の損耗がもったいないわ。実際のダンジョンでは出来る限り消費を避けたいわね。ただ、どちらが消耗が少ないかは分からないけど。」


中に突っ込んでいけば混戦となり体力を消費し、外からなら魔力と矢が消費される、と。

ふむ。


「さっきのではちょっと大変だったけど、それまで疲れるってほどじゃなかったから、中に突っ込んで行こうと思うけど、どう思う?」

「罠の位置も分かってるし、そっちの方がいいんじゃないかな? 罠を避けながらの戦闘をするっていう訓練でもあるし。」

「そうね。それがいいと思うわ。」


意見の一致もした事だし、いっちょ行きますか。


「じゃあ、行くぞ。」


みんなの返事を聞き、部屋の中に入る。

すると、地面から壁がせり上がってきて入り口を塞いできた。

アデラードさんが作ったんだろうけど、これで閉じ込められたわけだな。

こんなギミックがダンジョンにあったとしても不思議ではない。

さっきの注意で事前に話し合うようにして良かった。

突然やられたら動揺していたかもしれない。


いつものように、俺、セフィア、リリン、レイダさんが前に出る。

アカネとユキノには後衛の守りをしてもらう。

本来はレイダさんの仕事なんだけどねぇ。

まあ、今更か。


「ハァッ!」


こいつはゴーレムだけど、サンドゴーレムなので剣でも戦える。

これがロックゴーレムやアイアンゴーレムだったりすると魔法を纏わせるか打撃系で攻撃だけどな。


「せいっ!」


背後から放たれる魔法や魔法銃の弾丸。

それによって爆砕し、吹き飛ぶゴーレムの身体。

数が多いので全部相手にできないからすごく助かる。

止めきれなくて後ろに行ってしまったゴーレムはアカネとユキノが倒してくれる。


「やあっ!」


接近してくるゴーレムの腕を斬り飛ばし、胴体を薙ぎ、露出した核を壊す。

ある程度数を減らすと動けるスペースが部屋全体に広がるが、むやみに動き回らず、罠にかかる確率を減らす。

罠の種類までは確認出来ないのでゴーレムを使って解除することもできない。

もしもこれが毒ガスならこんな密室ではみんな死んでしまう。

罠感知はレベルを上げると罠の種類まで分かるようになるといいな。


「終了! お疲れ様。」


ゴーレムを全て倒して増援がないかしばらく警戒した所でアデラードさんの声が聞こえてくる。

その声を聞いてようやく警戒を解くことができた。


「さて、今回の事だけど、事前に話し合ったのは良かったよ。魔法も威力や広範囲のものを使っていないというのも罠を誤爆しないようにという配慮が出来てて良かった。ただ、戦闘に関してはもっと連携をしっかりと取るように。レイダは突出しすぎだし、セフィアはそれをカバーしようとして戦闘がおろそかになって何体か後衛の方に行かせてしまってたよね? レント達は特殊だからそうホイホイと仲間を増やすわけにはいかないし、武器を変えるのも難しいだろうから受け止める人がいない。ならせめて前衛は後衛が仕事をしやすいように、後衛は前衛が守りやすいように動くことを意識しないと。」


盾持ちが居ないからねー。

居ないなら居ないなりの戦い方が必要ってことだよね。

となると、俺とレイダさんがアタッカー、セフィアとリリンが遊撃、シアとルナ、蒼井が後衛で、アカネとユキノ、そしてルリエが中衛というのか理想かな。

ま、その辺はいろいろ試してやりやすいのを見つけていくしかないけど。

ウチはいろいろ特殊だからね。


何回か訓練を繰り返した所で日が暮れ、この日の訓練は終了となった。

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