第719話 次は不合格なんて言われないように頑張ろう。的なお話。

「さて、それじゃ訓練を始めようか。まずはセフィア、ここに書いてある線に合わせて訓練用フィールドを作ろうか。」

「あれ、今回は前と違うんですか? なんていうか、部屋みたいな……。」

「うん。今日は小部屋内という設定でやってもらうから。だからパーティを分ける必要はないよ。」

「そうなんですか。でも、これなら前のよりかはやりやすいかな。」

「まあ、ただの部屋だからね。でもその内迷路のような複雑なのも作れるようになってもらうからね。」

「わ、分かりました!」


一昨日言っていた通りセフィアが作るようだ。

しかし、小部屋か……。

小部屋で思い出すのはモンスターハウスだな。

あれだけの数がいて更に罠も追加されるというのは、なかなかにきつそうだな。

ちゃんと集中していかないと。


「うーん。及第点かな。まだまだ強度は足りてないけどね。」

「うぅ……難しい。」


問題ないように見えるけど、厳しいんだなぁ。


「それじゃ訓練を始めるけど、さっきも言った通り今回は小部屋での訓練だからね。一昨日よりも広いから人数が多くても戦えるけど、その分より周囲の把握が必要になる。敵味方だけでなく罠の位置にも気を配るように。特に、気配察知に頼る癖のあるユウキ。」

「分かりました!」

「それと、魔法を使うときにも気を使うように。誤って罠を作動させないようにね。」

「「「はい!」」」

「じゃあ、私はゴーレムの準備をするからみんなはその間にランニングや準備運動をしていて。」


いきなりじゃないのはありがたい。

実戦ではそうもいかないが、準備運動が出来ると怪我の確率が減るからな。


「始めて!」


そういえば、罠はどうすんだろう?

まあ、入ればわかることか。


「止まって!」

「リリン? ……っまさか!?」

「ん。多分落とし穴。入口のすぐそば。」

「なるほど。確かに落とし穴も罠だわな。リリンがいて良かった。」

「え? どういう事?」

「蒼井は知らなかったか。リリンは罠感知のスキルを持ってるんだ。レベルは低いけどな。リリン。他に罠は?」

「4つ。」

「じゃあ、罠から1番離れている場所は?」

「あそこ。後、来た。」


リリンの言う通り、ゴーレムさんのお出ましのようだ。

しかも、数は……めっちゃいるなぁ。

人型に獣型、流石に飛行型はいないようだけど、数はパッと見じゃ分からないくらいには多い。

リリンが言う罠から1番離れている所に陣取り、迎撃を行う。

罠にかからないためには離れるのが1番いい。

いきなり来るとは思わなかったけど

、正確な罠の場所が分からない以上は離れた所でまずは対処。

その間にリリンに正確な場所を調べてもらう。


「くっ! 結構強い!」


一昨日よりも強くて虚を突かれた。

勝てない相手じゃない。

一対一ならば瞬殺出来る強さだ。

しかし、こうも多い上に、罠の危険もあって自由に動けない。


「リリン! 罠は?」

「あそことあそこ、それに、あそことあそこ!」


確かに配置的にはここが1番遠い。


「みんな! 罠の位置は分かったな? 罠に気をつけつつ着実に倒していこう!」


罠を警戒して密集するのをやめ、攻勢に出る。

陣取りゲームのように、徐々に行動範囲を広げていく。

ゴーレムは罠の位置が分かるのかそこを避けているので、戦いやすくもある。

倒したゴーレムで罠を潰したりもして、訓練開始から20分ほどかけてゴーレムの全てを殲滅する事ができた。

でもこれ、キッツイ!


「不合格!」


戦闘を終えて始まった講評で真っ先に言われた言葉がこれ。

なんで?

誰も罠にかかってないよ?


「なんでわざわざ罠のある部屋で戦うのさ。別に閉じ込められてはいないよね? なら一度通路まで戻って出て来た所を叩いていけばいいじゃない。追いかけてこなくても、その間に罠の位置の確認や、作戦会議なんかも出来たよね? 場所によっては閉じ込められることもあるけど、そうじゃないのなら何も馬鹿正直に戦う必要はないじゃない。」


理不尽だ!

確かに正論ではあるけども!

でも、この訓練の趣旨を考えたら撤退とかそんなの思いつくわけないじゃないか!


「いかにして効率よく戦うか、消耗を防げか、それを考えるのもリーダーの務めだよ。」


とはいえ、正論なだけに反論しても意味がない。

したとしても言い訳にしかならない。

ならば、その言葉を胸に刻んでいくしかない。


「休憩を挟んだら違う設定でやるから、次は臨機応変に対応するように。」

「「「はい!」」」


次は不合格なんて言われないように頑張ろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る