第698話 どうなる事やら。的なお話
「本日は急な誘いにもかかわらず、来ていただきありがとう。今日は王都よりやって来たユースティア子爵が帰るということでこうして宴を開かせてもらった。彼等を盛大に見送る為に今宵は騒ごうではないか。では、乾杯!」
時間きっちりにやって来た太守であるギリアムさんは今回の夜会の開催理由を話し、乾杯を宣言した。
そのギリアムさんの側には3人の女性と複数の若い男と少年がいる。
あれは多分奥さん達と以前言っていたたくさんの息子さんだろう。
そして女性の1人に手を繋がれている小さな女の子。
ギリアムさんが溺愛しているという1人娘かな。
さて、乾杯の音頭が取られた事で夜会が始まったわけだ。
というわけで早速料理を……と思った時に服が掴まれる。
なんだ?
と思ったらアカネだった。
「まだだめよ。」
「なんでだ?」
「まだ侯爵や伯爵とか上位貴族が食事を取ってる所よ。2回目以降は食べるスピードや会話なんかをしてるから気にする必要はないけど、最初は爵位準備なの。」
「なるほど、そういうことか。」
なんか面倒だなぁ。
いやまあ、分からなくはないけども、面倒なものは面倒。
俺は……どこに分類されるのだろうか?
冒険者枠か?
それともアカネの同伴者だから子爵相当?
いや、流石に子爵相当は無いだろうし男爵?
うん。
分からん。
まあ、俺自身は冒険者なんだし、最後の方が面倒ごとが怒らなくて済むだろから後の方がいいか。
そんなわけで順番待ちをしているのだが……。
ああ、大きなブロック肉がどんどん小さくなっていく。
あれ狙ってたのに……俺の番まで残っててくれ。
あ、あの蟹も!
くぅ……爵位なんて面倒なだけだろうし、貴族になんてなりたくはないが、この時だけは爵位が羨ましい!
あ、なんか人気ないのがある。
あれは……エビじゃん。
それも伊勢海老のようなタイプで脚がワシャワシャしてるやつ。
サイズは50センチくらいあるけど。
というか、なんで蟹は良くてエビはダメなのだろうか?
まあ、ありがたいけど。
日本人なのでエビも大好物です。
そしてようやく俺も料理を取りに行けるようになった。
まずは小さくなってしまったブロック肉から。
無くなると困るからな。
そして蟹。
次にエビだ。
そのままの姿で蒸されているが、流石に一尾丸々というのは大き過ぎるので半身にしてもらう。
なんか周りが驚いている気がするが気にしない気にしない。
健康に気を使って野菜なんかもそこそこ取り、最後にパンを持ってテーブルから離れる。
「なぁ、なんで周りは驚いてるんだ?」
「なんでって、それが原因よ。分かってるでしょ?」
「原因はわかるが理由が分からないんだよ。エビ美味いじゃん。」
「それは分かるけど、この国だとエビは水中に住む虫扱いで珍味というかゲテモノ枠なのよ。」
「そうなのか? でも、蟹と変わらないぞ?」
「そうだけど、ここじゃそういう扱いなのよ。」
「ふーん。ま、俺は得したからいいけど。」
そう言いつつアカネもちゃっかり確保してるけど。
そこはやはり日本人という事なのだろう。
それに、海外ではタコは食べないっていう話もあるし、日本では高級扱いのイクラも高い安い以前に食用ではなくて海に捨てる所もあるらしい。
だから場所によって食べるもの、食べないものに差があるというのも理解できる。
でもなんで並べたのだろうか?
誰かの好物なのかね?
「所で、レントは緊張してなかったっけ? 大丈夫なの?」
「ああ、まあ、アデラードさんと話したりナタリアさんと話したりしてるうちにな。それに、よくよく考えれば他の貴族と関わる事自体無いだろうし、そう考えたら緊張が薄れた。」
「意外とたくましいわね。」
まあ、緊張するのはこれからだけど。
だってユースティア子爵家御一行がこっちに歩いてきてるし。
付き合う事を伝えなきゃと思うと緊張する。
ユースティア子爵に伝えなきゃいけないんだけど、どうなる事やら。
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