第697話 ついに夜会が始まった。的なお話
「はぁ〜……。レジュル子爵は相変わらずだったね。」
「相変わらずって、あの人はいつもああなんですか?」
「大体ああだね。」
「ああなんですか……不味くないですか?」
「不味いよね。だから今頑張ってる。」
「お疲れ様です。」
あの視線から分かるようにかなりの女好き。
そして、表では冒険者を支援すると言いつつ、裏では暴利を貪り、冒険者をいいようにしているという。
この2つを合わせると、女冒険者を支援するフリして借金を背負わせて食い物にしてるという構図が出来上がる。
絶対やってるよね?
だってどう見てもやる奴だもの。
そこで気になるのが、ナタリアさんがリーダーを務める冒険者クラン『天装の姫』。
加入条件は女である事のみ。
そしてクランの思想というか存在目的は女性冒険者の為。
レギオンではなくクランなので、そこまでメンバーがいるわけではないが、それなりに大人数。
そしてメンバーはすべて女性。
被害者の1人や2人紛れてる可能性がある。
しかし、証拠集めとかを秘密裏で行なっている現状、その事を聞くのは良くないだろう。
少なくとも、こんなに人が集まる場所ではしない方がいい。
そうこうしている内に開始まで残り20分となり、その頃になると男爵や子爵といったそこまで偉くない貴族は全員集まり、伯爵、侯爵あたりが集まり始める。
といっても、その辺は3人だけなんだけどね。
ちなみに、ここグラキアリス王国は五爵である男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵に加え、辺境伯、大公、後は騎士が貴族という扱い。
もっとも、名誉が付く物と騎士は継承権が無いんだけど。
と、この世界に来る前にアリシアさんに教わった。
……先日のディーノさんを含め騎士の人達も貴族なんだよな。
言葉遣いに気を使ってて良かった。
開始まで残り20分を切ったからだろうか、メイドさん達が料理を持って現れ、テーブルの上に料理を並べていく。
「じゃあ、私は挨拶に行って来るからまた後でね。」
「あ、はい。分かりました。」
そう言うとアデラードさんは伯爵と思しき人の方へと向かった。
「そういえば、ナタリアさんはいいんですか? 挨拶とか。」
「ああ、私自身は爵位を持っていませんから。今回も冒険者として招待されていますので。もっとも、ここの太守には私がランベルス子爵家の娘という事は知られていますので、夜会の度に呼ばれていますわね。」
「そうなんですか。てっきり貴族枠で呼ばれているのかと思ってました。」
「貴族として呼ばれると面倒ですからね。幸い、私はカッパーランクですから呼ばれてもなんら不思議ではないのですよ。」
「そこ。そこなんですよ。どうして貴族の夜会に冒険者が呼ばれるんですか?」
「この街は冒険者がいるからこそ成り立っています。それ故、一定ランク以上の冒険者はこうして特別待遇を受けることがあるのですわ。」
「そういう事だったんですか。」
疑問が晴れてちょっとすっきり。
後はどうしようかな。
俺は特に挨拶しなければいけない相手なんていないし。
精々ナタリアさんくらいのものだが、こうして話していたわけだし、その必要がない。
だが、夜会開始までまだ少し時間がある。
隅の方で本を読んでいるというのもこの状況では目立つだろうし……どうしようかな。
とりあえず、料理でも眺めてようかな。
貴族が食べる料理なんてまず見れない。
テーブルの配置で分かってはいたが、立食形式なんだな。
でもそこは貴族と言うべきか、各料理の側にはメイドさんが立ち、料理を取ってくれるというスタイルのようだ。
貴族が料理を自分で盛るというのも違和感があるしな。
……この料理、セフィア達に食べさせたいな。
俺とアカネだけ食べられるというのはなんだか申し訳ない気持ちになって来る。
持って帰れないものだろうか?
いや、流石にそれは無理か。
〜セフィア視点〜
「今頃あの2人は美味しいもの食べているんだろうなぁ〜。羨ましい。なんとかして私も行けなかったかな?」
「しょうがないよ。僕達は貴族じゃないんだから。」
ユウキちゃんが羨ましいと言う。
その気持ちは分からなくもないけど、流石にどうしようもないと思う。
「貴族の料理ならアデル義姉さんの家で食べたことあるでしょ。」
「そうだけど! そうだけどそうじゃないの! 夜会で、パーティーで出るからこそ意味があるのよ! 他の貴族に見せるための料理。知り合いを招いて食べるものとはわけが違うのよ!」
「今回は随分と熱弁するわね。それなら誰か貴族と結婚すればいいんじゃない?」
「それはなんか違うというか……料理だけのためじゃなくて、やっぱりそこは好きになった相手とがいいわけで……」
そういえばユウキちゃんの恋愛観を聞くのは初めてかもしれない。
となればするべき事は1つ。
レントの為、そして僕達のためにも、ユウキちゃんの情報を集めよう!
〜レントに戻ります〜
ッ!?
なんだ?
今なんか変な悪寒が……。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。」
「緊張してきた?」
「そうかも。ダンスとかやっぱり心配だし。」
悪寒は多分この後のことが原因なのだろう。
きっとそうだ。
緊張をほぐすためにアカネとおしゃべりしてよう。
そうして時間が過ぎ、ついに夜会が始まった。
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