第689話 精神を癒そう……。的なお話
ナタリアさんと共に歩いていると、前方に見覚えのある後ろ姿を発見する。
「リリン?」
「ん? レント? どうしたの?」
「どうしたはこっちのセリフだ。宿でのんびりしているんじゃなかったのか?」
「買い物。レントも行く?」
「行くって、どこに?」
「おもちゃ屋さん。」
「あら、おもちゃ屋さんですか。ちょっと興味がありますわね。」
あちゃー。
ナタリアさん。
違うんですよ。
リリンの言うおもちゃ屋さんは普通の玩具ではなく、夜のおもちゃの方なんですよ。
ここは迷宮都市。
むくつけき男が多く集まる場所。
つまりそれはそういう事もビジネスとして成り立ちやすく、それに付随するようにそれ関係のアイテムも集まる。
でも、それを言うわけにはいかない。
というか、所謂大人のおもちゃで夜に使う奴なんですよー。なんて言えるか!
「一緒に行く?」
「いいんですの?」
「リリン、ちょーっと待とうか。すみません、ナタリアさん。ちょっとリリンと向こうで話があるので。」
「え、ええ。」
リリンを連れてナタリアさん達から少し離れる。
「一緒に行ってどうするんだよ! 絶対気まずくなるわ!」
「意外と興味あるかも?」
「……あったとしても知り合いと仲良く行くような場所じゃないだろ。」
「私は気にしない。」
「少しは気にして! 相手貴族だから!」
流石リリン……全然動じてない。
でもここは動じてて欲しかった。
「とにかく、一緒に行くのだけは無しだから。」
「向こう次第。」
「話を聞いてよ!」
不安だ……。
ただのおもちゃ屋だと思ってたら絶対断らない。
そしてその後どういう店か知って気まずくなるんだ。
もう変えようがない。
素直に暴露してもそれはそれで気まずくなるし、逃げ道ない。
「あ、ああ、すみません。その、私これから用事が……そう! アカネと今度の夜会について話がありますの! ですから失礼します!」
「あ、ちょっ!」
突然脱兎のごとく退散するナタリアさん。
アカネと話があると言いつつアカネを置いていく慌てぶりだ。
一体何があったんだ?
「ごめん。リリンが言うおもちゃ屋が普通だとは思えなくて、そのことを伝えたら……。」
「ああなったと。」
「うん。私ちょっと追いかけるから、レントはリリンと一緒に行って。というか、私もその店はちょっと……。」
「あ、うん。分かった。」
そして走り去っていくアカネ。
でもね。
嫁さんと大人のおもちゃ屋さんに行くのは俺もキツイんですけど!?
それなんてプレイ!?
こういう時通販があれば!
そう思っていても、どうにもならないのが現実なわけで、俺はリリンと一緒におもちゃ屋に行くことに。
辿り着いたおもちゃ屋にはアニメではモザイクが掛かっているような、ういんういんと蠢く何か(◯魂の吉◯編で最後に子供がおっさんのケツにぶっ刺してたやつ)だったり、ピンクくて丸い何かがあったりした。
多分この辺は勇者や転移者転生者が関わっている。
しかしそれを嫁と物色するのはハードルが高すぎる。
というわけでまだマシなコスプレ系の物でなんとかごまかす。
リリンってば、良くこんな所に平然と来られるよな……。
それに、なんでこういう店ってピンク色がベースなんだろう。
バニースーツを人数分買えてホクホク顔のリリンと共に宿へと帰る。
はぁ……。
疲れた。
肉体的ではなく、精神的にすごく疲れた。
あんな所俺にはまだ早いよ。
それに慣れない高級店に行ったりもしたから、なおのこと疲れた。
宿の部屋に着いたら、セフィアに甘えよう。
膝枕とかしてもらって、精神を癒そう……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます