第688話 一緒に帰る事にする。的なお話
「さ、次の店に行きましょ。」
「次ぃ!? まだ行くの!?」
「アデラードさんがどんな服を持ってくるかわからないから、ある程度種類を揃えておいた方がいいでしょ。」
確かに服によっては合わない可能性だってあるだろうが、だからってこれ以上の出費は困る……。
普段が訓練訓練、また訓練な日々だからお金を使う事はあまりないけど、でも仕事自体はあまりしていないからここで大きな出費は痛い。
「安心して。使わない奴は売ればいいから。」
「成る程そっかー。ってなるか! 売っても中古だからどう考えてもマイナスじゃねーか!」
「冗談よ。次は見るだけだから。必ずしも必要なわけじゃないし、服と合わなかった時用の予備だから取っておいてもらって必要なら買う、そうでなければ他の人に売ってもらえばいいから。」
「最初からそうすればいいだろうに……。」
「それでも1つは必要でしょう? 本音を言えばもう少しあった方がいいんだけど、流石に高いからね。」
「これ以上ってどんだけだよ……貴族じゃなくて良かったわ、俺。」
「……貴族じゃなくて良かったなんてセリフ、初めて聞いたわね。」
ちょっとしたパーティーで100万も飛ぶのだ。
それなら貴族になんてならない方がいい。
お金は有限。
だからこそ、そんなに使わない物にお金をかけたくはないのだ。
そういえば俺、ゲームでも貴重なアイテムは結局最後まで使わないタイプだったな。
日本伝統のモッタイナイ文化が根付いているからかな。
それはそれとして、アカネの奴、お貴族様モードだからなのか、普通に話せてるな。
このまま気まずさも無くなればいいんだけど。
「次はここよ。」
アカネに連れられて次のお店へ。
するとそこにはナタリアさんがいた。
「あら、アカネじゃないの? ひょっとしてデートかしら?」
「違うわ。ナタリアも聞いていると思うけど、夜会の準備よ。」
「太守様が開く奴ですわね。ユースティア家が参加すると聞いていますから、アカネが参加するのも当然というわけですわね。」
「そういう事。それでレントが私の同伴者だから一緒にアクセサリーを見ようと思ってね。」
「では一緒に見ましょうか?」
「いいわね。」
お互い貴族の家出身という事もあって、仲良くなったアカネとナタリアさん。
貴族であるのだから参加したとしても不思議ではないし、その為の準備としてこういう店にいたとしてもおかしくはない。
だが、問題はそこではなく……。
「これなんていいんじゃないかな?」
「どうでしょう……レントさんにはこちらの方が似合うと思いますが。」
「そっちのはさっき買った奴と系統が似ているから別の方がいいのよ。」
「ではこちらですかね。」
「でもこっちのも捨て難いのよね……。」
「確かにこちらも似合いますわね。」
何故に俺のを仲良く選んでいるんだよ……。
自分のは早々に決めたからって俺のを選ぶ必要ないだろ。
それに、こうも楽しそうに選ばれていては、買う予定はないんですけど買う可能性があるので取っておいてもらうんですよー。なんて言えない雰囲気になってきているんだけど。
どうしたらいいんだよ。
「では、これがいいですわね。」
「そうね。すみません。これ取っておいてくれますか? 買うかどうかは数日後にはわかると思うので。」
「かしこまりました。」
ほっ。
良かった。
どうやら買わないという話は覚えていてくれたようだ。
「あら、買わないんですの?」
「私達って今アデラードさんに鍛えられているじゃない? だからあまり仕事を受けている余裕がないのよね。それで、出費を抑えたいから今は買うことができないのよ。とりあえず当日着る服を見て判断するつもり。」
「成る程。そういえば私の実家にもアデラード様が訪ねてきたという話を聞きましたわ。なんでも、ドレスを借りれる人を探しているとかなんとか。」
「それ私ね。急な話でドレスを用意できないからアデラードさんが借りれる人を探してくれたのよ。」
「そういう事でしたか。確かにあなたの境遇を考えれば、ドレスを用意してあるはずもありませんしね。」
「そもそも、もう夜会に参加する事もないと思ってたし。」
「そうなんですの?」
「そうなの。」
俺もう帰っていいですかね?
随分と仲良く話してる事だし、俺いる必要ないよね?
「あ、ごめん、レント。話し込んじゃって。それじゃナタリア。また今度ね。」
「いえ、私も帰ろうと思ってましたし、近くまでご一緒しますわ。」
「そう? じゃ、行こうか。」
断る理由もないし、アカネも楽しそうなので一緒に帰る事にする。
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