第676話 それは間違いない。的なお話
アカネにデートプランはと聞かれたので正直に何も考えていないと答えた。
そしたらアカネが行きたいところに行こうと聞かれたので、胸の感触に意識を取られつつそれでいいと返事をしたところ、連れていかれたのは服屋さん。
そういえば、全く関係ないけどとある温泉旅館の女将の孫娘が仲居として成長していく様を描いたアニメ作品に服屋と同じ響きの名前の旅館があったな。
なんか、そこのモデルの旅館にヒキニートだかオタだかが働くようになったって話があったな。
そんな事を服屋さんでボーッとしながら考えていた。
多分、長くなるであろう買い物から心を守るためにどうでもいい事を考えてしまったのだろう。
しかし、その反応も無意味に終わった。
何故ならすぐにアカネが試着を開始したのだから。
ありがたい。
そしてアカネは1人ファッションショーを始めた。
その理由がもっと自分を見て欲しいという理由だから、アカネの本気っぷりが伺える。
そうして見せられるアカネの色々な姿はどれもこれも似合っていてかわいい。
クール系も似合ってた。
フリルたっぷりというのも、15歳という年齢もあってよく似合っていた。
流石に20代30代ではキツくなるだろうけど、今なら問題なく似合っている。
「どれもこれも似合っている。でも個人的にはシンプルで清楚な感じのワンピースが1番いいかな。頭に被っている帽子とも合っていてかわいいと思う。」
そう言ったら嬉しかったのかワンピースのを着て行く事にしたようだ。
自分の一言でそう決めたというのは、なんていうか、むず痒いな。
嬉しさと恥ずかしさが混ざっている感じで。
服の後はアクセサリー。
露店を冷やかしつつ色々見て回っていると絵に描いたようなナンパ男ABCが現れた。
何やらごちゃごちゃ言っていたが、こんな奴らにアカネを渡すことなんて出来るわけがないだろう?
こいつらとアカネでは背伸びをしようとシークレットシューズを履こうと馬鹿みたいにでかい竹馬に乗ろうと、何をしたところで釣り合うはずがない。
「ちょっと今デート中なんで、邪魔しないでもらえますか? それと、臭いんであんまり近づかないでくれませんか? 彼女に匂いが移っちゃうんで。」
「んだと、このガキ。女の前だからってカッコつけっと痛い目見るぜ?」
こういう時に知り合いだなんて言おうものなら「俺らが貰っても構わないよな?」とか言い出すかもしれない。
だから、アカネには悪いけど彼女と呼ばせてもらった。
武力行使ドンと来いだ。
かかってくるがいい。
「おい、よく見たらこいつ……。」
「あ? …………あっ! アレだよな? ギルマスの……。」
「間違いない。俺何度か見たことあるし。」
「「「………………。すいませんっしたぁ! 俺らちょっと用事があるのを思い出したんで、その、すいませんでした!」」」
喧嘩上等!
とか思っていたのに…………何これ?
ギルマスがどうこうとかボソボソと言っていたかと思えば突然逃げ出してしまった。
面倒ごとが向こうから去ってくれたのは楽だからいいのだが、なんとも解せぬ結果に。
俺にテンプレはないのか……。
「えーと、その、ご飯食べに行こっか?」
「そうだな。」
お昼もアカネが行きたいという店で取り、再び街をプーラプラーのプーラプラー。
大道芸人を眺めてお捻りを投げたり、吟遊詩人の語るこの国の王都で食べたなんとかという料理が美味しかったという話や、旅の冒険者の失敗談なんかを面白おかしく聴かせてもらったり。
度胸試しや力試し、運試しなんかの遊べるタイプの屋台なんかも回ったりする。
午後からは何でもないような事しかしていない。
この世界の娯楽施設なんかには立ち寄ることもなく、ただ街を歩いているだけのデート。
アカネは何の目的があってこんなプランを立てたのだろうか?
そんな疑問はあるが、楽しいことは間違いない。
だからあっという間に夕暮れ時に。
「ねぇ、レント……今日楽しかった? いろんな可能性の私を見て、飾らない素の、自然な私と接していて、どうだった? 少しでも魅力的な女の子に見えたかな?」
そんな考えだったのか。
確かに今日のアカネは可愛かった。
一緒にいて楽しかった。
それにアカネは元から魅力的な女の子だ。
それは間違いない。
だけど俺は……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます