第636話 おおきいんだなぁ〜。的なお話

「ヤッバーイ! 遅刻するーー!!」


先ほど起きて慌てて準備をするアデラードさん。

わたわたとしている様はかわいいと思うのは、惚れた弱みか、それともアデラードさんがちっこいからか。


「あ、レント。」


ビクッとしてしまった。

まさか、また気付かれたか?

ちっこいって思ったことを。


「奴隷市の関係で私はしばらく忙しいから、しばらくこっち来れないから。」

「あ、そうなんですか。」


後ろで、何人かの目がギラリと光った気がする。

俺、今夜寝れるかな?


「それと、ちっこいは余計だよ。」


バレてました。


「じゃ、行って来るね〜。」

「行ってらっしゃい。」


行ってらっしゃい、ね。

どんだけ馴染んでいるんだか…。

まあ、悪い気はしないけどさ。


床に転がっている酒瓶を片付けて、厩舎に向かう。

なんだかんだあってずっっっっっと! 出来ていなかった乗馬を教わるのをしたいと思ったから。

それと同時に喫茶店デートも。


「げっふぅ!」


マロンに思っくそ頭突きをされてしまった。

何故だ?

とりあえず立ち上がり、アルバの方に向かうと……


「おぶっ!」


またも頭突きを食らう。

何故だ!?

前はあんなにも穏やかだったのに!

反抗期か!?

馬にも反抗期があるのか!?


とりあえず、機嫌が悪いみたいなので、一旦退散する。

こりゃ今日は無理そうだな。


宿に戻りみんなと朝食を摂る。

その際に話題としてさっきあったことを話してみたところ、何故かシアに怒られてしまった。


「あんたバカでしょ! そりゃ、あの子達も怒りもするわよ! ずっと厩舎に押し込められてストレスも溜まってる上に、飼い主であるレントは久しぶりに訪れてる。怒って当然よ!」

「な、なるほど……。」


言われてみれば、怒って当然だった。

むぅ。

こうなると、まずはアルバ達のご機嫌をとるのが先になりそうだ。

というか、一体いつになったら俺は馬に乗れるようになるんだ?

馬具がストレージの中で絶賛肥やし中だ。


「というわけでレント。今日は丸一日使って二頭の機嫌をとりましょう。」

「それは分かったけど、何をすればいいんだ? ブラッシングか?」

「それもいいけど、どこかで思いっきり走らせるのも必要よ。」

「どこか、ねぇ。どこがいいんだろう?」

「探せば牧場なりレース場なりあるでしょ。」

「それもそうだな。」


そうと決まれば早速行動開始。

こういう時はまず聞き込みから。

というわけでレイちゃんに聞いてみたところ、カジノのレースに出る馬や魔物の練習コースがあって、そこを自由に使用できるようになっているという、ありがたい場所があるそうで。

早速頭突きを食らいつつシアと一緒に教わった場所へ向かう。

1人で二頭を引っ張っていくのは無理があるので。


辿り着いた場所はかなり広く、いくつものコースが設置されており、そこでサラブレッドっぽい馬や馬車を引くのに多く使われているアルバ達と同じグルーム種、カジノのレースに出ていたグレートファングをはじめとする魔物が走っている。

まあ、流石に魔物を普通の馬と同じ場所で走らせるのはまずいようで、その辺の奴は柵で分けられていた。


「そこの者、止まれ!」


眺めながら敷地内に入ろうとするとそんな声をかけられる。

すごく警備っぽい声のかけ方だと思いながら声のした方を見て、絶句した。


「…………………。」


短く切りそろえられた金色の髪。

よく言えば騎士っぽい、悪く言えばコスプレっぽい鎧を上半身に纏う女性。

それだけならば問題ない。

問題なのは、下半身が馬なのだ。

そう、つまりはケンタウロスなのだ。

神話に出てくるような、ある意味エルフ以上にファンタジーな存在。

そのケンタウロスが目の前にいる。


「ああ、驚かせて済まない。今から模擬レースを行うのでな。不用意に入ってきて怪我をしてはいけないと思い声をかけさせてもらった。」


初めて見たけど、ケンタウロスっておおきいんだなぁ〜。

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