第622話 ままならないもんだな。的なお話
次の部屋も何もない。
魔物がいないことはリリンの気配察知によって分かっていたけど、宝箱とかがあるかも知れないから覗いてみたんだが、普通に何もなかった。
その次もその次も、魔物もいないし宝箱もない。
何故だ?
宝箱ならまだしも、なんで魔物もいないんだ?
「モンスターハウス。」
「また? その辺を歩くのはいないのにモンスターハウスはあるのな。」
どうするのか? と思って蒼井の方を見てみると、やる気になってる。
1度目の結果が微妙だったせいだろう。
レイダさんもやる気だ。
仕方ないか。
2度目のモンスターハウス戦と行きますか。
今回のモンスターハウスはコボルトの家だったが、ゴブさん家同様上位種がおらず簡単に殲滅できた。
そして出て来た宝箱からは……。
「銀鍍金の盾だって。」
「今度は銀メッキかい!」
蒼井のツッコミが冴え渡る。
ちなみに、こっちには金鍍金の光剣と違い属性は付いていない。
小休止をとった後は昼食をとる事も考えてセーフティーエリアの方に向かう。
その道中、ようやく魔物と遭遇する。
朝のオーク以来か。
2時間だ。
2時間も探索して、ようやくだよ。
本当に、何が起きてるんだろうか?
あ、オークは蒼井が速攻で撃ち殺してる。
そしてお昼の為にセーフティーエリアに向かった所で魔物が異様に少ない理由が判明した。
単純に、同業者がいただけだった。
その冒険者パーティの名前は堅牢の斧。
カルロ達かよ。
「おお! レント達じゃねーか。ここで会うなんて珍しいな。」
「まあ、普段はアデラードさんの訓練でダンジョンに潜る暇ないからな。今回はダンジョンに行っていいって言われたからな。まあ、気分転換的な意味もあったと思うけど。と、その前に昼食の準備をしていいか?」
「ああ。」
許可も取ったので昼食の準備。
買い置きしてある薪を燃やして出番は終了。
後は調理をするセフィア達を眺めることしか出来ることはない。
「凄いな。いつもこうなのか?」
「何が凄いのかは分からないが、大体こうだな。」
「普通はここまでしっかりとした物は作らないから凄いって意味だ。というか、持ち運びが大変だし、魔物が匂いにつられて来る事もあるからな。」
「俺はアイテムボックス持ちだからな。匂いだってここならそうそう魔物も来ないだろ。」
「それはそうだが……別の意味で困る。美味そうな匂いさせやがってよ。」
「あははは! まあ、実際美味いしな。」
「くっそう! 見せつけやがって!」
カルロと他愛もない会話をしているうちに準備が済んだようだ。
というわけで早速。
「「「いただきます。」」」
うん。
相変わらず美味い。
「飯の話は置いとくとしてよ、お前、奴隷市に興味はねーか?」
「ないよ。事足りてるしね。」
「なんだよ。つまんねーな。」
「そういうカルロはどうなんだよ? あ、もしかして、あんまりにも彼女が出来ないから奴隷で……「違うわ!」 え? 違うのか?」
「違う。俺達は会場の警備の依頼を受けてるんだよ。だからこうして浅い階層で軽く肩慣らししてるんだよ。」
「ふーん。じゃあ、会場で会う事もあるかもな。」
「なんだ、興味ないとか言ったくせに結局行くのかよ。」
「俺達も依頼だよ。アデラードさんが普段護衛を頼んでいるクランが帰って来ないとかでやってくれって言われたんだ。」
「そうなのか? でも、そのクランって金剛だろ? 俺達、そいつらに少し前に会ったぞ。」
「へ? 金剛って、金剛の繋ぎ手って奴らのことか?」
「お。なんだ知ってたのか。」
「いや、ただ単にすれ違っただけ。名前もそん時初めて聞いたし。……しかし、そうなるとちょっと面倒なことになりそうだ。」
「多分なるだろうな。」
金剛さん達は帰るって言ってたから護衛のことを考えての日程だったのだろう。
で、そこに俺達も同じ依頼を受けましたーって、なるわけだから、これは俺達の依頼だ! いいや、俺達のだ! って事になりそう。
めんどーだな。
しかし、ここで簡単に折れると強く言えばあいつらは依頼を譲るなんて思われてロクでもない依頼を押し付けられる結果になるかも。
それは勘弁。
「だよな。はぁ……。こりゃ、覚悟しといた方がいいな。」
「そうだろうな。ま、俺には関係ない事だけど。」
「薄情者め……。」
「なんとでも言え。そもそも、俺にはどうしようもないしな。」
「ここでカッコよく俺が何とかしてやるとか言えるような人間なら、モテただろうに……。」
「うっせぇよ! というか、前に言ったら、「え、ありがとう。」って普通に返されたわ!」
「それはなんというか……ドンマイ。」
第一印象の大半は見た目って聞くし、こいつはどうみても粗野で粗暴な冒険者って外見だからな。
そうなるのも仕方ない。
22歳だけど。
根は悪い奴じゃないんだが……ままならないもんだな。
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