第621話 一応魔剣だぞ。的なお話

脇道にそれるとすぐに魔物と遭遇した。

その魔物はまたもオーク。

縦に真っ二つにして倒した。


脇道に逸れてそうそう魔物と遭遇したし、戦闘が多そうだ。

とか思ってたけど、そうでもなかった。

20分くらい探索してるけど、全然遭遇しないし、珍しく宝箱もあったと思えば、中身はカラで誰かに取られた後だったりと、本当に何もない。

せいぜい、モンスターハウスを1つ見つけたくらいだ。


「どうする、これ?」

「面倒だし、無視でいいんじゃない?」

「うーん……そうだな。漫画やゲームだと全部倒すとちょっと豪華な報酬とかがあったりするけど、わざわざ危険を冒す必要はないよな。」

「…………前言撤回。やっぱ行こう。」


しまった。

余計なことを言ってしまった。

そのせいで蒼井がやる気になっちゃったし、視界の端でレイダさんも槍を握りしめているのが見える。

うん。

無理。

この2人を止めるのは俺には無理だ。


「あー、なんだかやる気になってる人が2人ほどいるから入るってことでいいかな? 流石に同格以上の相手の所では入らせないから。」

「そんなの当たり前でしょ。私だって死にたくないんだから。」

「ならそんなこと言わないでくれよ。」

「……乱戦の訓練とかもしておいたほうがいいだろうし、格下で手加減しなくていいここは丁度いいじゃない。」

「それ、今考えたよな?」

「……ソンナコトナイワヨー。」


そんなことあったな。

でも理にはかなってる気がする。

アデラードさんに聞いてみないことには分からないが、ここにはいないし……ここにはいないから聞けないしわざわざ聞く必要もないだろう。

だから、リリンは行こうか? みたいなジェスチャーはしなくていいからね。

転移出来るからってそんなことしなくていいから。


モンスターハウスに突撃すると中にはゴブリンがたくさん。

多分50は超えてると思うが数えるのが面倒だしたくさんで。


「囲まれないように注意して。そして囲まれた時に死角が出来ないように出来る限り複数で固まって行動。」


ブ◯ーチ理論。

ブリ◯チで背中合わせで戦ったほうが戦いやすいって言ってた。

そんな気がする。

多分言ってた。


複数で、となると大体いつもメンバーが決まっている。

既婚者組とシアとルナにユキノ、蒼井とアカネとレイダさん。

その3グループに分かれて殲滅行動をし、そこかしこでゴブリンの悲鳴を奏でていく。

どうやらここにはゴブリンの上位種がいないようで全部普通のゴブリン。

なので結構簡単に倒せた。

でも、囲まれたりした時の周囲の把握の仕方とかを学ぶいい機会になったのは良かった。

敵の位置と味方の位置、武器の振り方、魔法の使い方とかを考えさせられる。

全員で一体の相手をするのには慣れていたから新鮮だったな。


「結構いい練習になったな。」

「そうだね。あ、見て。宝箱が出て来たよ。」

「本当だ。誰が開ける?」

「はいはいはい! 私! 私が開ける!」

「それはいいが、ミミックじゃないよな?」

「大丈夫。気配察知に反応はないから!」


1人だけでは不安なのでリリンとユキノの方を見てみるが……問題ないみたい。

首を縦に振ってる。

大丈夫みたいだ。

なので安心して蒼井が開けるところを見てると、すごく嬉しそうな顔でこっちに中身を見せて来た。


「なんか綺麗な剣が出て来た!」

「へー、どれどれ……『鍍金の光剣』だって。」

「なぁーんだ。ただの金メッキか。」

「鍍金って分かった途端テンション下がったな。」

「しょうがないじゃん。メッキなんだもん。」

「まあ、気持ちはわかるが……あ、でも微弱ながら光属性は持ってるみたいだぞ。」

「本当!?」

「ああ。『微弱ながら光属性を備えるが、調子の良し悪しによる』だって。」

「剣なのに調子の良し悪しって……。」

「でも良かったじゃん。一応魔剣だぞ。」

「思ってたのとちがーう!」


所詮は浅い階層で出る物だし、こんなもんだろ。

とは言わない。

言うとまた何か騒ぎそうだし。

というわけで、蒼井をなだめて次の部屋へ。

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